インターナルブランディングのプロセス|③ワークショップ
参加することで、活動を「自分ごと化」する。
頭を使い、手を動かし、発言する。ワークショップは“感情”に作用し、インターナルブランディング活動を本気にさせます。
ワークショップの効果
企業のビジョンや行動指針などを決める際、従業員が自分ごととして参加できる方法のひとつに、ワークショップの開催があります。ワークショップは、従業員が頭と手を動かし一緒に考えることで、企業のあるべき姿を「自分たちで考えた」という実感を持つため、その後の施策をスムーズに行動に移すことができます。また、ワークショップに参加した従業員は、企業の理念を深く理解し、まわりの従業員へ広めていく「伝道者」としての活躍も期待することができます。
従業員同士は普段、仕事の話はしても企業のありよう、あるべき姿について話すような機会は少なく、ワークショップにおけるコミュニケーションそのものが同じ組織で働く立場としての絆を強め、モチベーション向上にもつながります。
ワークショップメンバーの選定
大企業の場合、全従業員を参加させるのは難しいため、企業を横断する幅広い層から選抜し、開催するのが理想的です。自分の意見を言うのが得意な人や、ムードメーカー的立場の人がいるとワークショップはスムーズに進行しますが、多様な資質の人の意見を聞くことが全方位から企業を見ることになります。また、ワークショップに毎回必ず参加できる人で構成しましょう。会場は、研修施設やホテルなどを利用し、現場と離れた場所で実践をすると心理的開放感から自由なディスカッションが期待できます。
また、ワークショップのファシリテーターは、参加者に心理的なバイアスをかけず、率直なディスカッションをさせるために参加者との上下・利害関係などがない中立的な人物であることが求められます。「質問力」の高さも重要です。ファシリテーターは、ワークショップを進めるにあたり、自身の偏見や先入観で従業員の考えを変えたり、発言の内容に影響を与えてはいけません。従業員の意図するところをできる限り正確に汲み取り、事実を確認し、そのうえでグループメンバーが解釈しやすいよう言語化し、考察させます。答えを誘導しないよう心がけてください。
ワークショップの実践
開催前に、メンバーへのアンケートを予め実施し、結果を事前情報として経営層に伝え、意思統一を計りながら進行するとスムーズです。配布するアンケート項目には、主に下記のような内容があげられます。
●アンケート項目例
・仕事のやりがい
・仕事をするうえでのポリシー
・現在企業が持つブランドイメージについて
・理想のターゲット像
・自社の強みや弱み など
アンケートを集計したら、ファシリテーターはその内容を把握してワークショップに臨みます。メンバーから得た回答をグルーピングしながら、企業のあるべき姿を導き出していきます。先述したように、メンバーの考えを誘導しないようなファシリテーションを心がけましょう。ワークショップは主に下記のような流れで進めます。
●ワークショップの流れ
1.事前アンケートの共有
→アンケート結果をメンバーに共有します。
2.自社の強みを考える
→現在のビジョン・ミッションの浸透度、なぜ自社(ブランド)は顧客に愛されているのか、なぜ従業員たちはここで働くことを選び続けているのか。また商品の品質やスペックなど、あらゆる切り口から自社の強みを言語化します。
3.理想のターゲット像を考える
→自社(ブランド)のファンとなる消費者のペルソナ(人物モデル)を確立させます。「すべての人に自社のブランドを愛して欲しい」と考えがちですが、ビジョンなど企業の想いを確実に届けるためにはターゲットを絞る=大事な人を明確にすることが大切です。
例)30代、共働き既婚女性、子供ひとり、クリエイター職、年収450万円、東京在住、趣味は料理、よく行く場所は銀座など
4.競合について考える
→競合相手のブランドとしての強みや課題点を明確にします。
※2〜4のプロセスは、いわゆる3C分析です。企業の「現実の姿」をより正確に把握します。
5.自社の存在意義を考える
→世の中への価値を考えることで、従業員が自社に対する誇りを醸成する道筋が見えてきます。その強みを、3で設定したターゲットに説明する言葉を考えることも効果的です。
6.自社の将来像を考える
→「こうなれば、自社(ブランド)はもっとよくなる」「もっと従業員が自社を愛するようになる」と考えられるポイントを言語化します。メンバー全員が自社の未来に期待を感じる空気になるために、あらゆる切り口から自社が持つべき強みを考え、そのなかからもっとも強調したいものを選びます。潜在的なニーズや時代の変化による兆しを読み取利、競争優位となるポイントを探し出していきましょう。また、自社が理想の状況になったらどんな“人格”であってほしいか、どんな口調でどんなことを話すのかをイメージすることも効果的です。
7.自社の将来像のために、具体的にすべきことを考える
→自社ブランディング向上のため、従業員がとるべき日常の行動について意識し、施策の策定につなげます。
ワークショップの効果を最大化するために
ワークショップの場において正解や不正解、また「言ってはいけないこと」はありません。自由で活発な意見交換ができるよう、雰囲気づくりを大切にしてください。また、複数の人が同じ言葉を発したとしても、それが全く同じ考えから発言されたものではないこともあります。「なぜ、その発言に至ったのか」をしっかりと探っていくことが、多面的な視点から自社を改めて見つめることにつながります。また、自分の考えを深く話し合うことで、従業員同士の絆が深まるのがワークショップの特徴でもあります。楽しく、親しみやすい空気で実施し、よりインターナルブランディング向上につなげましょう。
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