有意義な位置づけで、自社優位性を築く。

戦略グループマップと移動障壁、ポジショニング戦略と差別化を学びます。

Introduction

戦略グループマップを把握する

戦略グループとは、自社が属する事業または製品・サービスにおいて、自社と同一または類似の基本戦略をとるグループを指しています。戦略グループを把握することで、業界内における競合他社がより明確となり、競合分析を図ることで、以降の戦略策定や課題抽出に役立ちます。
戦略グループは、それぞれ固有の移動障壁を持っており、移動障壁が大きいほど安定した収益性を確保することができます。また、同業界内において戦略グループが多いほど競争は激化し、収益性が低下します。戦略グループマップの軸には、業界の移動障壁となる要素を設定する必要があり、移動障壁を明確に定めることで初めて、自社のポジショニング戦略を策定することができるようになります。

移動障壁とは

移動障壁とは、企業が戦略上のあるグループから別グループに移動するのを困難にする要因のことを指しています。企業の戦略はブランドイメージに直結し、自社の従業員はもちろん、取引先や消費者に浸透し理解されています。そうしたブランドイメージは、あらゆる経営資源を投資することで構築されていることから、企業が戦略を転換するためには、さらに多大な経営資源を投資することになり、容易ではありません。米国の経済学者マイケル・ポーターの競争戦略論では、移動障壁を次の3つの要因に分類しています。

①製品のディメンション

製品のディメンションとは、製品の性質やラインナップの違いを指しています。製品やサービスは企業によって異なる性質を持ち、製品開発に必要な技術や品質が異なることから「製品の違い=戦略の違い」であり、品質が高いほど移動障壁が大きくなると言えます。それが低価格化されていると、さらに大きな移動障壁&参入障壁が大きいと言え、ラインナップが充実すれば尚更です。

②流通経路のディメンション

流通経路のディメンションとは、製品製造から出荷・販売までの流通経路や、流通チャネルの違いを指しています。独自性が高い、または流通チャネルを独占しているなど、流通経路の確保にハードルがあるほど、移動障壁が大きくなると言えます。

③販売戦略のディメンション

製品のディメンションで解説した通り、「製品の違い=戦略の違い」であり、企業は戦略に基づき広告デザインのトーン&マナーを決定していきます。やがて広告イメージはブランドイメージとなり、ファンとなった消費者はブランド・ロイヤルティを抱きます。
一旦築いたブランドイメージを覆すには多額の経営資源を有すばかりか、顧客離れを引き起こす要因となりかねません。このことからも、既存企業が戦略グループにおいて、優位性の高いブランドを構築しているほど、大きな参入障壁となります。

ポジショニング戦略の策定

ポジショニング戦略とは、選定したターゲット市場において自社製品(自社サービス)が他社製品(他社サービス)よりも魅力的であると認知してもらえるポジションに自社を位置づけることにあります。マーケティング戦略をもとに、自社が目指すポジションを見つけ出し、自社製品・自社サービスの優位性をより具体化していきます。

ポジショニング戦略策定4つのフロー

ポジショニング戦略の策定には大きく4つのフローがあります。①購買決定要因(KBF)を意識した特徴の抽出、②属性のリストアップ、③属性の絞り込み、④ポジショニングの検証、を①〜④の順で策定していきます。

①購買決定要因(KBF)を意識した特徴の抽出

例えば、ユーザーがデザインを重視し、数ある製品のなかから一番デザイン性のある製品を選んだ場合、そのユーザーの購買決定要因は「デザイン性」という事になります。または一番安い製品を選んだ場合、そのユーザーの購買決定要因は「価格」ということになります。ポジショニングを策定する際には、そうしたKBF(key Buying Factor:購買決定要因)※を意識しながら自社製品の特徴を抽出していく必要があります。
優れた製品であれば、ありとあらゆる特長をユーザーにアピールしたくなるものですが、ユーザーが認識できる1製品の特長はせいぜい2つまでであることを留意し、KBFを意識しながら製品の特長を絞り込み、ポジショニングを策定していかなければなりません。
※KBF(key Buying Factor:購買決定要因)とは、顧客が商品・サービスの購買を決める際に重視する要素(価値)のこと。

②属性のリストアップ

ポジショニング戦略では、抽出された特徴に付随可能な属性を定めていくことが重要です。例えば、食器洗い洗剤は、どのメーカーの商品でも除菌ができるのが当たり前のことではありますが、P&Gの食器洗い洗剤「ジョイ」は、あえて「除菌ができる」というポジショニングを定めることにより、ユーザーに強烈な印象を与え大ヒットを生み出すことに成功しました。また、アメリカの「ライフブイ石鹸」は「体臭を消す」というポジショニングを定めることで大ヒットを生み出しました。
当たり前の機能であっても、こうしてユーザーに新たな価値を提供することで自社製品の独自性を高め、顧客ニーズを捉えていくことができることがわかります。自社製品の属性をリストアップし、ポジショニングの可能性を探ることが、以降のマーケティング戦略の成否を大きく左右すると言っても過言ではありません。

③属性の絞り込み

特徴の抽出、属性のリストアップを行った後、ユーザーにアピールする特長を2つ程度に絞り込む必要があります。これは、前記した通り、ユーザーの覚えられる1製品に関する特長は2つ程度であると言われていることから、アピールする特徴が多いと“結局どんな特徴があるの?”となってしまい、ポジショニングの確立が難しくなってしまうからです。

《属性を絞り込む際の3つの留意点》
◉目的:他社製品と比較して、自社製品の方が魅力的であると認識してもらう
◉想定:競合他社が追随してくる可能性を想定し、競合が取りにくいポジションをとる
◉自社製品間でのバッティング:自社製品間でのカニバライゼーション(共食い)を避ける

④ポジショニングの検証

属性を絞り込み、ポジショニングが確定したら、策定したポジショニングが有効であるかを改めて検証しなければなりません。ポジショニング策定の段階では、客観的な判断が甘くなり、自社製品の特徴に目が行きがちで、ターゲット顧客のニーズが本当にあるのかを見失ってしまう事もめずらしくないことから、競合他社とはっきり差別化出来ているのかを今一度、検証しなければなりません。

《ポジショニング検証時の留意点》
◉他社と差別化できるベネフィットを定める
◉競合製品とはっきり差別化できているかを検証する
◉ユーザーのニーズや行動を分析する。
◉顧客のニーズが本当にあるのかを検証する
◉市場ボリュームを把握し、特性やニーズを分析する。
◉市場の一般的なKBF(購買決定要因)を抽出する
◉需要があるところにポジショニングする
◉ユーザーの視点で軸を選定する
◉相関性の高い軸を設定しない
◉自社製品をどのように認識してもらうかを明確化する
◉自社製品について独自のポジションを築く
◉ユニークな差別化イメージを植えつける
◉他社には替えられない存在を目指す
◉ポジショニングを正確に伝えていく
◉ポジショニングに顧客が共感する
◉企業と製品ポジショニングの親和性がある

《軸に選定する主な要素》
①金銭的軸 :安い、高い
②機能的軸 :簡単、早い、複雑
③感情的軸 :楽しい、爽快
④精神的軸 :革新的、自由
⑤外見的軸 :かっこいい、モダン、スタイリッシュ
⑥ステータス的軸 :権威性、希少性

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