姿勢や魅力の言語化から、独自性を端的に伝える。

企業ブランディングに不可欠となるMVV、ブランドコンセプト、タグラインと、その制作方法について解説します。

Introduction

メッセージを表明し、ステークホルダーに愛される企業へ。

永続することを前提とする企業が、社会に認められ、愛されるためには、企業姿勢を明確なメッセージとしてステークホルダーに伝え続けていかなければなりません。ここでは、企業ブランディングに不可欠となるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、ブランドコンセプト、タグラインと、その制作方法について解説します。

企業ブランディングにおいて不可欠なブランドメッセージ

企業ブランディングにおけるブランドメッセージの役割は、企業の姿勢や魅力を的確なメッセージとしてステークホルダーに伝え、社会への認知度や企業イメージの向上、社員のモチベーション向上を図ることにあります。そのため、企業ブランディングにおいては、企業の信念・姿勢・価値観など、独自性を端的にわかりやすく伝える、ミッションステートメントやタグライン、ブランドコンセプトなどのブランドメッセージの存在が不可欠だと言えます。

ブランドメッセージの活用シーン

開発したブランドメッセージは、ステークホルダーとのすべてのタッチポイントで活用されます。ここでは代表的なコミュニケーションツールを紹介します。

●Webサイト(コーポレートサイト/ブランドサイト)

会社概要や沿革、CSR、サステナビリティなどの会社案内をはじめ、事業案内、採用情報、IR情報、プレスリリースなどが掲載されるコーポレートサイトは、すべての企業に不可欠な、企業の顔とも言えるWebサイトです。企業の掲げるミッション・ビジョン・バリューやブランドコンセプトを掲載することでステークホルダーに正しく、もれなく思いを伝え、企業のイメージアップから価値向上や信頼獲得を図るなど、事業活動の重要な役割を果たします。

●会社案内パンフレット

企業が自社をアピールするために作成する会社案内パンフレット。企業のミッション・ビジョン・バリューをはじめ、事業内容、製品やサービス紹介、そして会社概要・沿革・経営方針などが記載されます。

会社案内パンフレットは、企業の印象やイメージを形成するために重要な役割を果たします。また、新卒採用や業務提携先など、企業との関わりを持つ人々に対して、企業の情報を提供するためにも活用されます。一般的に会社案内パンフレットは紙媒体で作成されますが、近年ではデジタル媒体としても提供されることが増えています。

デジタル媒体の場合、動画やアニメーションなどの多様な表現方法を埋め込むなど、幅広く活用することができます。企業のイメージを形成するために会社案内パンフレットは重要なツールであり、企業の方針やスタンスを的確に表現することが求められます。

●コンセプトブック

コンセプトブックとは、お客様・取引先などへ、会社情報とは別に「企業の想い」や「製品・サービスのコンセプト」をメインとてまとめあげたパンフレットなどの冊子で、イラストや写真、文章などを使い想いが伝わるよう構成していきます。周年事業などのイベント時に、周年の感謝や今後の方針及び決意表明を行うなど、改めて「企業らしさ」を社内外に伝える冊子としても活用されます。

●コンセプトムービー

「企業の想い」や「製品・サービスのコンセプト」をメインとして映像化し、動画を通して伝えるツールで、実写・アニメーション・CGなど、企画の具現化に向け多様な手法で制作されます。制作したコンセプトムービーは、コーポレートサイトやブランドサイトに公開される他、広告、イベントなどでも広く活用されます。

ブランドメッセージの源泉「MVV」

MVVとは企業のコアを言語化したもので、企業・組織がどのような事業を行い社会にどのように役立つのかを示す「ミッション」、企業・組織が将来目指すありたい姿を示す「ビジョン」、自社の強みや大切にしたい行動を示す「バリュー」の3つを指しています。企業ブランディングにおけるブランドメッセージはMVVを基軸として作成を行います。

●MVV/タグライン事例[キリンホールディングス]

【Mission】
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します
【Vision】
食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
【Value】
熱意・誠意・多様性〈Passion. Integrity. Diversity.〉
【Tagline】
よろこびがつなぐ世界へ

●MVV/タグライン事例[日立グループ]

【Mission】
優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する
【Vision】
日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします。
【Value】
和・誠・開拓者精神
【Tagline】
Inspire the Next

●MVV/タグライン事例[リクルート]

【Mission】
Follow Your Heart
【Vision】
まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。
【Value】
新しい価値の創造・個の尊重・社会への貢献
【Tagline】
まだ、ここにない、出会い。

企業ブランディングにおけるMVV・ブランドコンセプト・タグライン開発

企業ブランディングにおけるMVV・ブランドコンセプト・タグライン開発をご紹介します。

①MVV開発

現在MVVを策定していないという場合は、自社・競合・市場を現状分析から把握し、MVVを作成します。そのために行っておきたいのがワークショップです。経営者や担当者を含めたステークホルダーを集め、3C分析やSWOT分析というフレームワークを使用しながら、自社の独自性を明らかにしていきます。そうして見つけ出した自社の「らしさ」を、ミッション・ビジョン・バリューに落とし込んでいきます。

MVVがすでにある場合は、ブランドメッセージの基軸となるMVVの再確認からはじめます。「ミッション・ビジョン・バリューすべてに一貫性があるか」「世の中の流れに沿ったものになっているか」「現在の方針とズレはないか」を確認し、少しでも違和感がある場合はMVVの見直しを図ります。

●SWOT分析

SWOT分析とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を、強み(Strength)、弱み (Weakness)、機会(Opportunity)」、脅威(Threat)の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法のひとつです。ここでは主に、自社の強みや市場にある機会を抽出していくことで、自社らしさを明らかにしていきます。

●3C分析

3C分析とは、企業を取り巻く環境を分析する際に用いられるフレームワークのひとつで、PEST分析、ファイブ・フォース分析ともに、企業戦略策定に向けた環境分析の際に用いられます。3Cはそれぞれ、「顧客・市場(Customer)」、「自社(Company)」、「競合(Competitor)」の3つの視点から、顧客の動向を念頭に市場と競合を分析し、事業領域における成功要因とリスク要因を導き出していきます。ここでは主に、他社との違いや自社優位性を抽出していくことで、自社の強みを明らかにしていきます。

②ブランドコンセプト開発

ブランドコンセプトとは、「誰に」「どんな価値を提供するのか」を社内外に共有するためのメッセージです。MVVで明らかにした自社の「らしさ」に価値を感じるターゲット層を絞り込み、市場の中でどのようなポジションを目指していくかを設定し言語化していきます。

ブランドは多くの人を対象にするほど、特徴がなくなり、平凡なブランドになってしまうため、より詳細に自社の立ち位置を示すブランドコンセプトは競合他社との差別化には必要不可欠だと言えます。さらにターゲットと提供する価値を明確化させることで、ブランドコンセプトを通して社内の企業活動に一貫性を持たせられるという効果もあります。

③タグライン開発

ブランドコンセプトをもとに、自社の独自性や、強み・らしさをメッセージ化していきます。タグラインを形にしていく際は、2つのことに注意しなければなりません。

1つは、誰にでもわかりやすく、従業員や顧客に共感されるものになっているか。これは社内外にタグラインを浸透させるための注意点です。もう1つは、「当たり前のことを言ってしまっていないか」です。

例えば食品を扱うブランドであれば「安全」や「品質」は前提条件であり、自社独自の価値とは言えません。また、他社にない価値とも言えません。どのような安全なのか、どのような点で品質が優れているのか、具体性を持たせていくことで、当たり前のことから自社ならではのタグラインに昇華することができます。