企業 DNA を“見える化”する、周年記念誌の力。

周年記念誌がブランドを強くする理由を、実例で読み解くデザインガイド。

Introduction

企業の物語を未来へつなぐ、周年記念誌という資産

企業の周年は、単なる年数の積み重ねではなく、そこには、創業の想い、時代ごとの挑戦、社員やパートナーとの関係性など、数えきれない物語が息づいています。周年記念誌は、その歩みを可視化し、企業の“存在理由”や“らしさ”を改めて照らし出す特別な媒体です。
過去を振り返るだけでなく、未来へ向けた意思を伝えることで、社内の心を一つにし、社外へは揺るぎないブランド価値を発信する。周年記念誌は、企業の歴史と未来をつなぐ、かけがえのないブランドコミュニケーションの起点となります。

周年記念誌の役割

周年記念誌は、企業の歩みを丁寧に記録し、創業の原点から現在に至るまでの軌跡を「形」として次世代へ残す文化資産です。積み重ねた歴史を可視化することで、何を大切にし、どのように成長してきたのかを社員やステークホルダーに明確に示します。
また、周年は過去を称えるだけでなく、未来への意思を宣言する節目でもあります。記念誌はそのメッセージを視覚的・物語的に伝えることで、企業の未来像を共有し、組織を前向きに動かす力を持つ重要な媒体です。

社内外に向けたブランドコミュニケーションとしての位置づけ

周年記念誌は、企業の存在価値やブランド理念を“視覚”と“ストーリー”で伝える強力なコミュニケーションツールです。社内に対しては、歴史や理念を再確認し、一体感や誇りを醸成する役割を果たします。社外に対しては、信頼の積み重ねや企業姿勢を丁寧に伝えることで、パートナー・顧客・求職者など、多様なステークホルダーにブランドの本質を深く理解してもらう機会となります。
周年記念誌は、周年をきっかけに“企業らしさ”を再定義し、内外へ発信する戦略的ツールとして大きな価値を発揮します。

100年企業にも、10年企業にも必要な3つのデザイン戦略

周年記念誌の価値を最大限に引き出すためには、「何を伝え、どう表現するのか」の戦略的な設計が不可欠です。そして、企業の歴史や理念を読み解き、ブランドらしさを視覚とストーリーで伝えるための土台となるのがデザイン戦略です。
明確なコンセプト、印象を決定づけるキービジュアル、そして読ませる構成を生み出すストーリーテリング。この三つが組み合わさることで、周年記念誌は単なる冊子ではなく、企業の過去・現在・未来をつなぐ強力なブランドメディアへと進化します。

1.コンセプト設計の重要性

周年記念誌づくりの出発点となるのが「コンセプト」です。企業の歴史や文化、理念を丁寧に読み解き、“その企業らしさ”を明確な言葉として定義することで、誌面全体の表現軸が定まります。
コンセプトは単なるスローガンではなく、写真・文章・レイアウトなどすべてのデザイン判断の基準となる存在です。これが定まることで記念誌に統一感と深みが生まれ、読者がブランド価値を自然と感じ取る力強い一冊へと昇華します。

2.キービジュアルの考え方

キービジュアルは周年記念誌の“顔”であり、ブランドを象徴する最も重要なデザイン要素です。企業カラーや周年ロゴ、フォント、写真のテイストなどを最適に組み合わせることで、企業らしさと特別感が一目で伝わります。
また、視覚イメージの方向性が明確になることで、各ページのトーン&マナーも統一され、ブランドストーリーが力強く立ち上がります。周年という節目にふさわしい品格とアイデンティティを表現するための重要な設計ポイントです。

3.ストーリーテリング設計

周年記念誌は“読む体験”が価値の中心となります。そのため、歴史の流れや想いが自然と伝わるページ構成、読み進めやすい導線設計、伝えたい感情を正しく届けるトーン設定が欠かせません。ストーリーテリングを丁寧に設計することで、単なる情報の羅列ではなく「企業の物語」として読者の心に響く一冊へと仕上がります。
周年の重みや価値が“物語の体験”として伝わるかどうかを決める、最も重要なプロセスのひとつです。

周年記念誌を彩る、5つのデザインアプローチ

周年記念誌の魅力は、企業が持つ歴史・文化・未来像を“どのようなデザインで表現するか”によって大きく変わります。伝統を重んじる企業もあれば、未来志向の姿勢を示したい企業、“人”の温度感を伝えたい企業など、その目的やブランド特性は多様です。
本章では、代表的な5つのデザインタイプを紹介し、それぞれがどんな価値を生み、どのような企業に向いているのかをわかりやすくまとめました。デザインの方向性を理解することで、周年記念誌が持つブランド表現の可能性をより深く感じていただけます。

【TYPE A】歴史の厚みを伝えるクラシックデザイン

長い歴史を持つ企業や伝統産業が選ぶのが、クラシックデザインです。重厚なレイアウトや落ち着いたカラー、アーカイブ写真を生かすことで、企業が築いてきた年月の深みや格式が自然と伝わります。
創業の精神や理念が丁寧に可視化され、100年企業にふさわしい「歴史が語る説得力」を生む表現手法です。周年という節目の重みを読者にしっかり届けたい場合に最適です。

【TYPE B】未来を象徴するミニマル&クリーンデザイン

ミニマル&クリーンデザインは、革新性や技術力を象徴するスタイルです。無駄を削ぎ落とした余白設計、シャープなタイポグラフィ、統一感のあるグリッドで、未来への視点や洗練されたブランドイメージを強く訴求します。
IT企業やグローバル企業が多く採用し、先進性・理知性・精度の高さを視覚的に伝えることができます。企業の“今”と“これから”を鮮明に印象づける表現です。

【TYPE C】人を中心に描くエモーショナルデザイン

企業を支える“人”に焦点を当て、温度感や社風を伝えるのがエモーショナルデザインです。社員やコミュニティの写真、手書きの文字、柔らかな色調などを活かし、働く人々の想いや関係性が誌面から自然と伝わります。
企業文化を共有したい、仲間への感謝を示したいといった周年の目的に深く寄り添うデザインです。読み手の心に残る、人間味あふれる記念誌をつくることができます。

【TYPE D】数字・実績を魅せるデータドリブンデザイン

企業の成長や成果を客観的に伝えたいときに効果的なのが、データドリブンデザインです。売上推移や事業拡大、プロジェクトの成果をインフォグラフィックとして表現することで、企業の歩みを「視覚的な証拠」として提示できます。
論理性と透明性が求められる上場企業や研究開発型企業に相性が良く、読者の理解を促す“読みやすさ”と“説得力”を兼ね備えた構成が特徴です。

【TYPE E】ストーリーを紡ぐアート&クリエイティブデザイン

ブランドの独自性や世界観を際立たせたい企業に選ばれるのが、アート&クリエイティブデザインです。大胆なビジュアル表現や抽象的なモチーフ、印象的なレイアウトを用いることで、ブランドの価値観や思想を象徴的に描き上げます。
読み物という枠を超え、作品としての存在感を持たせることも可能です。周年を機にブランドの個性を強く打ち出したい時に最適なアプローチです。

歴史×誠実さ|歴史が語る誠実なブランド表現

歴史は、企業や組織がどのような姿勢で歩み続けてきたかを映し出す最も誠実な証です。創業期の苦労、挑戦の積み重ね、支えてきた人々の想い。それらを丁寧に記録し、未来へ手渡す役割を担うのが周年記念誌です。
本章では、20年・50年・100年と節目の異なる企業や団体の事例を通して、“歴史と誠実さ”がどのようにデザインに表れ、ブランド価値として伝わっていくのかを紹介します。積み重ねた時間が放つ説得力を、記念誌という形で可視化した表現をご覧ください。

20周年記念誌 制作事例|新光ネームプレート株式会社

タイ・バンコクの工場撮影から始まり、現地スタッフへのインタビューも実施。1998年の立ち上げから20年の歴史を記録し、未来への願いと従業員への感謝を込めて編集しました。長期間の校正を経て、企業DNAを凝縮した全28ページの一冊が完成しました。

50周年記念誌 制作事例|鎌ケ谷巧業株式会社

創業者1人から始まった50年の物語を、現社長や先代夫人への丁寧なヒアリングをもとに構成。貴重な写真とエピソードを織り交ぜながら、企業の礎となった歴史を温かく記録した記念誌です。

100周年記念誌 制作事例|三弘紙業株式会社

紙が貴重だった戦時下に「もったいない」の精神で始まったリサイクル事業。100周年を迎えた三弘紙業様には、困難を乗り越え続けた誠実さと、社員の強い絆という物語がありました。貴重な写真で歴史を振り返り、大改革のプロジェクトも紹介。コンセプト「100年、ひとつのこと。」のもと、風通しの良い社風が伝わる記念誌に仕上げました。

100周年記念誌 制作事例|一橋大学 硬式野球部

100年の伝統を次世代へ受け継ぐため、黎明期から現在までの歩みを章立てで構成。往年のOBによるインタビューを交え、歴史の息遣いを感じる内容としました。濃紺を基調にした上製本の表紙は、使い込まれた道具の質感と直線的なフォントにより、強さと真っ直ぐな精神を象徴しています。

未来×技術|未来志向を形にする技術のブランド表現

技術を軸に成長してきた企業にとって、周年記念誌は“未来への姿勢”を可視化する絶好の表現媒体です。精度の高いものづくりやITソリューション、革新的な開発力。その根底にある技術の価値は、デザインや構成によって力強く伝えることができます。
本章では、分析システム企業の挑戦を象徴したデータ表現、CADラインが未来像を描く構成、世界規模で技術を磨いてきた100年企業の視座など、技術と未来志向が融合したブランド表現を紹介します。技術の力で未来を切り開く姿が、周年記念誌という形で鮮明に浮かび上がります。

30周年記念誌 制作事例|データコム株式会社

分析システム企業としての強みを象徴し、周年誌のコンセプトを「分析」と設定。30年間の歩みや成長を紐解く構成とし、表紙には数字部分に穴開き加工を施し、背後に社員写真が覗く仕掛けを採用。30年を支えた人の力と企業の歴史を、印象的かつユニークに伝える記念誌に仕上げました。

40周年記念誌 制作事例|株式会社システムズナカシマ

全国で開催される謝恩会で配布する周年誌として、40年の歩みと次の10年の価値創造を表現。4つの異なるコンテンツが一体的に見えるよう、CADモチーフのラインを全ページに展開し、創業から未来へ続くストーリーをデザインしました。ロゴカラーを活かした表紙により、同社らしさが際立つ周年誌となりました。

100周年記念誌 制作事例|マーレエンジンコンポーネンツジャパン株式会社

創業から100年の節目を迎え、代表メッセージから歴史と製品の歩みを6ページで紹介。将来を担う若手中心の座談会「MECJの将来を描く」も掲載し、未来への意欲を感じさせる内容に。後半では各拠点の全社員写真や世界拠点紹介も加え、企業の今と100年の遺産を後世に残す一冊となりました。

人×文化|人の温度が伝わる、文化的ブランド表現

企業文化は、そこで働く“人”の姿にもっとも色濃く表れます。社員の表情、対話から生まれる価値観、社内に流れる空気感。周年記念誌は、こうした目に見えない文化を“人”を通して伝える力を持つ媒体です。
本章では、社員の生き生きとした姿を切り取った写真構成や、世代を超えた座談会、家族への感謝を込めたストーリーなど、人を中心に据えた表現が企業の魅力をどのように可視化するのかを紹介します。温度のある企業文化が誌面に宿ることで、周年記念誌は読み手の心に深く残る一冊へと進化します。

20周年記念誌 制作事例|株式会社谷口実業

社員やイベントなどの写真を交え、「歴史の写真集」として20年を振り返る構成に。初代・二代目社長の対談では、創業期の苦労や受け継がれるDNA、新社長の決意を紹介。周年パーティーではスライドショーも上映し、歩みを多角的に伝える周年プロジェクトとなりました。

30周年記念誌 制作事例|ナジコイーエス株式会社

成長とともに広がった“人を大切にする社風”を前面に表現。社員の生き生きとした写真を冒頭に配置し、OB座談会や代表インタビューも掲載。社員が楽しく読み、関係者にも伝わる“人の温度”が宿る記念誌に仕上げました。

30周年記念誌 制作事例|株式会社ストラクス

長期ビジョンに基づき、社員が「プロフェッショナル意識」を共有できる周年誌を制作。「あなたにとってプロフェッショナルとは?」の問いに寄せられた社員の声や、若手とベテランが語り合う座談会を収録。楽しみながら読める工夫で、プロ集団としての意識醸成を目指した内容となりました。

50周年記念誌 制作事例|株式会社昭栄電工社

電気工事にとどまらず、プラネタリウムやイルミネーションなど新しいことに挑戦してきた企業文化を、年表と実績紹介で力強く表現。変化を恐れず進化し続ける姿勢を、豊富な案件写真で“昭栄電工社らしく”まとめた50周年記念誌となりました。

70周年記念ブランドブック制作事例|ポーライト株式会社

企業の成長を支えてきた社員と家族への感謝を込め、歴史だけでなく時代背景も踏まえた読みやすい構成に。ものづくりへの姿勢や企業文化を、家族でも理解しやすい視点でまとめたブランドブックとなりました。

地域×共感|地域と共に歩む、共感を生むブランド表現

地域に根ざして歩みを重ねてきた企業や団体にとって、周年記念誌は“地域との関係性”そのものを伝える大切なメディアです。地域のお客様や住民に支えられてきた年月、日々の交流から生まれた信頼、そして共に未来をつくろうとする姿勢。それらは温度のある表現によって、読み手の心に深く響きます。
本章では、店主の想いを丁寧に紡いだ50周年誌や、地域に寄り添う姿勢を情緒的に描いた70周年誌を通して、地域と共に歩んできた歴史がどのようにブランド価値として可視化されるのかを紹介します。

50周年記念誌 制作事例|居酒屋 可呂久

昭和39年の開店から50年の歩みを、店主の感謝の言葉と共に親しみやすいデザインで表現。「50年の時が教えてくれたもの」を軸に、先代の時代から現在までの物語とお客様への想いを写真と共にまとめた、温かな周年パンフレットです。

70周年記念誌 制作事例|公益財団法人 横浜勤労者福祉協会

地域とともに歩んだ70年の「らしさ」を、寄稿文中心の従来形式から刷新し、イラストとモノローグで情緒的に表現。過去・現在・未来が自然につながる構成で、地域に寄り添う姿勢を優しく伝える記念誌に仕上げました。

学術×探究心|探究心が紡ぐ、学術ブランドの表現力

学術の世界に息づくのは、常に「探究し続ける姿勢」です。研究者の思考、挑戦の軌跡、積み重ねられた知の成果。周年記念誌は、こうした“探究の精神”を可視化し、次世代へ受け継ぐための重要な媒体となります。
本章では、多彩な体験を軽やかに伝える学生向けの10周年報告書や、研究テーマの蓄積を図鑑のようにまとめた30周年誌など、学術領域ならではの表現方法を紹介します。知への好奇心と学びの連続性が誌面から立ち上がり、学術ブランドの魅力が鮮明に伝わる構成となっています。

10周年記念誌 制作事例|在日本国大韓民国大使館

韓国を訪れた日本の大学生による体験発信「SNSリポーター事業」の10年間をまとめた記念冊子。大学生が楽しく読み進められるレイアウトにこだわり、情報量の多さを感じさせない工夫を随所に施しました。多彩な活動をわかりやすく伝える報告書です。

30周年記念誌 制作事例|公益財団法人 木原記念横浜生命科学振興財団

学術賞30回を記念し、木原均博士の精神を若手研究者へ届ける周年誌を制作。博士の言葉や受賞者インタビュー、そして30回分の研究テーマを図鑑のようにレイアウト。生命科学の面白さと研究の熱意を伝える一冊です。

周年記念誌で“強いブランド体験”をもたらすデザイン要素

周年記念誌を“ブランド体験のメディア”として仕上げるためには、デザインの細部にまで意味を宿すこと大切です。ロゴやカラー、写真、言葉、紙の質感など。これらは単なる装飾ではなく、企業の歴史・文化・未来を読み手に伝える重要な要素です。
本章では、周年誌の価値を一段引き上げる五つのデザイン要素を紹介します。視覚的な印象だけでなく、触感や読み心地まで含めた“体験としてのデザイン”が、周年記念誌を特別な一冊へと変化させます。

ロゴ・シンボル|周年ロゴ・シンボルマークの設計ポイント

周年ロゴやシンボルは、周年記念誌のアイデンティティを決定づける核となる存在です。数字やモチーフに企業らしさを織り込み、ブランドカラーや理念を反映させることで、“周年の意味”がひと目で伝わる強い象徴となります。
単なる記念デザインではなく、歴史と未来をつなぐシンボルとして機能するよう、シンプルさ・視認性・象徴性のバランスが重要です。冊子だけでなく、イベントツールやWebにも展開できる拡張性も求められます。

カラーパレット|ブランドカラー×周年ならではの特別感

周年記念誌のカラー設計は、ブランドらしさと“特別な節目”の両立がポイントです。普段のコーポレートカラーに加え、節目を象徴するゴールド・シルバー・アニバーサリーカラーを取り入れることで、格調と華やかさを演出できます。
色の選択は感情に大きく影響するため、歴史を伝える落ち着いた色調、未来を示すクリーンな配色など、目的に合わせて最適化することが重要です。ブランドの世界観を視覚的に強く印象づける要素となります。

フォトディレクション|歴史写真、人の臨場感、工場・本社・現場など

写真は、周年記念誌に“真実味”と“臨場感”をもたらす最重要要素です。アーカイブ写真で歴史の深みを、社員の表情で文化の温度を、現場や工場の写真で企業のリアルを伝えるなど、写真のディレクションはストーリーそのものを形づくります。
光の使い方や構図の統一もブランドの印象を大きく左右します。言葉では伝えきれない想いや日常を、写真を通して読者にまっすぐ届ける役割を担います。

編集・文章トーン|読ませる言葉・語りかける言葉

周年記念誌の文章は、企業の人格を表す“声”のような存在です。温かい語り口で社風を伝えるのか、端正で誠実な文体で歴史を紡ぐのか、未来志向の力強い言葉でビジョンを語るのかなど。トーン設定ひとつで読者の受け取り方は大きく変わります。
情報を整理しながらストーリー性を持たせる編集も重要です。読み手が自然とページをめくりたくなる、心に届く言葉の選び方がブランド体験を深めます。

触感のある印刷・装丁|紙質・加工・製本のこだわりで「特別な一冊」へ

周年記念誌は“記録”であると同時に“記念品”でもあります。手に触れた瞬間の質感、製本の重み、紙の厚みや光沢、箔押し・エンボス加工など。こうした触感の工夫が一冊の価値を大きく高めます。
また、特別な節目だからこそ、普段の広報物とは異なる上質な印刷・装丁を選ぶことで、企業の格と想いが伝わる仕上がりになります。読者が長く手元に残しておきたくなる“体験としての記念誌”を作り上げる仕上がりの分岐点です。

5つのプロセスから理解する、周年記念誌づくりの本質

周年記念誌制作は、“ブランドを未来へつなぐプロジェクト”です。その本質を理解するためには、制作の裏側にあるプロセスを知ることが不可欠です。
リサーチから始まり、コンセプト設計、デザインと編集、撮影・取材、そして最後の印刷・製本まで。各工程には、周年記念誌ならではの意味と役割があります。本章では、その5つのプロセスを紐解き、記念誌がどのように一冊の「ブランド体験」として形づくられていくのかを紹介します。

1.リサーチ・ヒアリング|歴史資料の整理、関係者インタビュー

周年記念誌の制作は、企業の本質を深く理解するリサーチから始まります。創業期の資料や沿革、記録写真、社内外のエピソードを丁寧に整理し、歴史の軸を紐解いていきます。さらに、経営者や社員、OBといった関係者へのヒアリングを行うことで、公式資料だけでは見えない“企業の温度”や“価値観”を掘り起こします。このプロセスが、記念誌のストーリーとデザインに一貫した説得力を与える重要な土台となります。

2.コンセプトメイク|“周年の意味”を定義し表現軸を決める

周年記念誌の方向性を決めるのがコンセプトメイクです。「今回の周年は何を伝えるためのものか?」を明確にし、歴史だけを語るのか、未来を示すのか、“人”を伝えるのかなど、表現の軸を定義します。この軸が定まることで、誌面のトーン、デザイン、写真、言葉選びまで、すべての判断基準が統一されます。周年の意味を言語化したコンセプトは、ブランド価値を伝えるための最も重要な羅針盤となります。

3.デザイン・編集|ラフ、構成案、デザイン展開、本文制作

コンセプトを基盤に、ページ構成、ラフデザイン、本文編集へと制作を進めていきます。どの順番で物語を展開するか、どの写真をどの大きさで扱うか、どんなトーンで文章を書くかなど。すべてが読者体験を左右する重要な設計です。デザインと編集を並行して磨き込むことで、見やすく読みやすく、ブランドらしさが自然に伝わる誌面が完成します。情報を整理しながらストーリーを紡ぐ“編集力”が品質を大きく左右します。

4.撮影・取材・座談会|ストーリーに厚みを与える素材づくり

周年記念誌に深みを与えるのは“現場の声”と“現場の瞬間”です。社員の働く姿、工場・オフィスの空気感、創業者の想い、若手社員の視点など。こうした素材は撮影や取材、座談会によって得られます。写真と生の言葉は、文章では伝えきれないリアリティを誌面に加え、企業文化をより立体的に描き出します。読者が企業を“感じる”ためには、このプロセスが欠かせません。

5.印刷・製本|周年誌ならではの高品質な仕上げ

制作の最終工程となる印刷・製本は、記念誌の“手触り”と“存在感”を決定づけます。紙質の選定、厚み、マットや光沢の加工、箔押しやエンボスなど、周年ならではの表現を加えることで、一冊の価値がぐっと高まります。普段の広報物とは異なる上質な仕上げにより、読者が長く手元に置いておきたくなる“記念品としての品質”が生まれます。周年の重みを形にする大切な工程です。

周年記念誌がもたらす5つのブランディング効果

周年記念誌は、企業が持つブランド価値をあらゆる方向へ広げる“戦略的なメディア”です。社内では、一体感や理念共有を促し、組織の軸を強くするインターナルツールとして機能し、社外では、企業文化や姿勢を深い文脈で伝え、信頼の獲得やブランド発信に大きく貢献します。
本章では、周年記念誌がもたらす5つの主な効果を解説し、一冊がどのように企業の未来を支える資産になるのかを紐解きます。

1.社内の一体感・エンゲージメント向上

周年記念誌は、企業の歩みや価値観を社員全員で共有する“共通の物語”をつくります。創業の想い、苦労を乗り越えた歴史、仲間の存在など。これらが一冊にまとまることで、社員は自分の仕事が企業の成長の一部であることを実感できます。
結果として、誇りや愛着が育ち、組織の一体感が格段に高まります。エンゲージメント向上のための、最も直接的で効果的なインターナルツールです。

2.採用強化(社風・文化の“見える化”)

周年記念誌は、企業文化を“見える形”で伝える強力な採用コンテンツになります。理念、価値観、日々の働き方、人を大切にする姿勢など。言葉だけでは伝わりにくい社風が、ストーリーや写真、社員の声を通してリアルに伝わります。
結果、応募者が企業理解を深めやすくなり、ミスマッチの防止にも貢献します。周年記念誌は、採用サイトや会社説明資料よりも深い文脈を届けられる、企業のDNAを示す貴重なアセットとなります。

3.パートナー企業の信頼獲得

周年記念誌は、企業が積み重ねてきた実績や姿勢を丁寧に伝えることで、パートナー企業からの信頼を高める役割を果たします。また、歴史の振り返りだけでなく、プロジェクトの背景や社員の想いを共有することで、「この企業となら安心して協業できる」という確かな印象を与えます。特に長期的な取引や協働を目指す場面で効果的で、信頼の証”として活用できる対外的なブランディングツールとなります。

4.歴史や理念の共有による経営基盤の強化

企業が大きくなるほど、創業の精神や理念は世代間で共有されにくくなりますが、周年記念誌は、企業の原点や大切にしてきた価値観を体系的に整理し、未来へ受け継ぐ役割を担います。また、周年記念誌を活用し、理念が全社員に明確に伝わることで、組織全体にぶれない軸が生まれ、意思決定の質やスピードも向上します。中長期で見ても、経営基盤を強固にするための大きな効果を発揮するツールです。

5.社外へのブランド発信力向上

周年記念誌は、企業の信念、姿勢、社会への貢献を深いストーリーとともに発信できる“ブランディングメディア”として機能します。パンフレットやWebサイトでは伝えきれない文脈や背景を表現することで、外部の読者に強い印象を与えることができるのが周年記念誌の特徴。採用、営業、広報など幅広い場面で活用でき、企業の魅力や信頼性を一冊で伝えられるため、ブランドを広く届けるための強力なコミュニケーション資産となります。

まとめ|未来へ伝える、記念誌のチカラ

周年記念誌は、企業の歴史を記録するだけの冊子ではなく、ブランドの本質を可視化し、未来へとつながる価値を創り出すブランディングメディアです。
デザインやストーリー、社員の声、写真、装丁といった要素が組み合わさることで、企業に“自らの歩みとこれから”を伝える力をもたらします。
一冊の記念誌が、社内の一体感を高め、社外には信頼と共感を広げる。周年記念誌は、企業の未来を形づくるブランド資産そのものです。

ブランディングチーム

パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。

記事制作/プロデューサー

ご相談や課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜くブランド戦略提案などを行います。

Producer
CEO 豊田 善治

東京のブランディング会社 パドルデザインカンパニー

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。