ビジネスシステムと事業戦略
業務活動を正しく把握し、課題抽出から改善を図る。
業務活動を効率よく進めるための、ビジネスシステムと事業戦略を学びます。
ビジネスシステムと事業戦略
ビジネスシステムとは、販売管理や生産管理など、企業の業務活動を効率よく進めるためのシステムです。ビジネスシステムの分析には、顧客を終着点として、製品やサービスを顧客に届けるまでに必要な活動を(事業プロセス)をフレームワークに落とし込み、その活動の特徴を正確に落とし込んでいくことで、自社や競合他社の強み・弱みを整理し、自社の特徴や課題を抽出していきます。
ある時期に最適であったビジネスシステムが常に最適であり続けることは難しいため、時代や市場の変化に伴いビジネスシステムを定期的に再構築し、常に最適を保ち続けることが重要だと言えます。
「ビジネスシステム」と「ビジネスモデル」の違い
明確な定義がなく、広義には同義として使用される「ビジネスシステム」と「ビジネスモデル」ですが、ビジネスシステムは一般的に、研究・開発など事業立ち上げから顧客に届くまで一連の事業プロセスを分類したもので、自社内の事業プロセス改善に用いられます。
一方ビジネスモデルは、顧客、仕入れ先、協力業者を含めた「事業が成り立つ仕組み」を指す場合が多く、外部ステークホルダーを含め事業の全体像を俯瞰するために用いられています。
事業経済性を設計する
事業経済性とは、事業戦略をコスト面から分析する考え方で、規模の経済性、経験効果、範囲の経済性、速度の経済性(タイムベース競争戦略)、連結の経済と大きく5つの要素があり、業界特性や製品ライフサイクルにより必要な戦略を策定していきます。
事業の経済性
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事業の経済性については、上記ページ「事業の経済性」で詳細をご説明させて頂きますが、ここでは、事業経済性の設計にあたり、事業の付加価値構造(コスト構造)や投資回収に多大な影響を及ぼし、事業を継続的に成長させていく上で最も重要な要素となる「価格設定」と、損益分岐に直接的な影響を及ぼす「固定費/変動費」、さらには「キャッシュイン/アウト」のタイミングについて学んでいきます。
製品・サービスの価格設定
企業収益に直接的な影響を与え、消費者の購買意欲に直結する価格設定は、事業戦略において最も重要なポイントとなります。また、価格設定は、製品・サービスのクオリティを消費者に訴求する最もダイレクトなメッセージであり、ブランド価値そのものだと言えます。どんなに優れた製品・サービスであっても、価格設定に失敗すると収益を上げることができず、事業の成長にもつなげることができません。
では、どのような方法で価格設定を行うべきなのでしょうか。価格設定の前提として注意しなければならないのが、顧客が適切価格だと認める価値「カスタマーバリュー」です。設定価格がこのカスタマーバリューを上回ると、製品供給力が極端に下がり、市場に製品を浸透させることができないばかりでなく、市場での競争力がなくなり、競合他社に市場シェアを奪われてしまう危険性が高まります。
また、市場での競争環境も価格設定に大きな影響を及ぼします。特に差別化のしにくい製品・サービスの場合、競合他社よりも低い価格設定を行うことで市場シェアは加速度的に増加すると言えます。競争環境に左右されず価格設定を行いたければ、製品・サービスの差別化を図り、価格以外の付加価値を高めていく必要があります。
価格戦略
https://www.paddledesign.co.jp/point/post-174.html
価格設定方法やその考え方については上記「価格設定」ページにて詳細をご説明させて頂きますが、価格設定において特に留意すべき考え方として、①ぺネトレーション・プライシング、②スキミング・プライシングと大きく2つの方法があります。
①ぺネトレーション・プライシング
導入期の価格設定では、販売量の増加と反比例し製造コスト単価が下がることを想定した、ぺネトレーション・プライシング(市場浸透価格設定)が行われることが多くあります。製造総量が増加することで生産プロセスは効率化され、同時に原材料の大量仕入れが行われることで、製造コスト単価を著しく下げる手法で、かつて日本の電機メーカーによる海外進出の際には、ぺネトレーション・プライシングが採用されました。
ペネトレーション・プライシングは、低価格で参入することで、市場を拡大すると同時に一気に市場シェアを獲得することを目的とした価格戦略で、中長期で利益の最大化が見込まれる反面、参入当初は先行投資が嵩むことから、ハイリスク・ハイリターンな戦略であるといえます。
②スキミング・プライシング
スキミング・プライシングとは、参入初期に高価格を設定することで早期の資金回収を行い、以降、ローリスクで低価格化を打ち出していく価格戦略です。巨額な先行投資を必要とする製品製造で用いられる方法で、製品開発をいち早く行った企業が用いることができます。スキミング・プライシングは、他社製品との差別化が明確で、市場競争の心配が少なく、価格の高低にニーズが左右されない場合にのみ採用することができ、生産財・産業財など、BtoB製品の価格設定に多く見られる戦略です。
イニシャルコストを低く、ランニングコストで利益を確保する
イニシャルコストを最小限に抑え、導入後の利用料やメンテナンス料、関連製品の販売などで利益を確保するビジネスモデルも考慮してみる必要があります。代表例には、コピー用紙、トナー、メンテナンスなどで利益を上げるコピー機や、通話料で利益を上げる携帯電話などが挙げられます。
●固定費を抑え事業リスクを低減する
生産や販売規模が変動しても、固定して必要となる一定額の経費が「固定費」です。逆に、生産や販売規模に応じて変動して発生する経費は「変動費」となります。この固定費は、損益分岐に直接的な影響を及ぼすため、リスクヘッジの観点で言えば、できる限り固定費を抱えないことが大切だと言えます。
特に新事業の場合、削減することの難しい固定費を抱えることは大きなリスクとなるため、委託業者へのアウトソーシングなども考慮して、削減しやすい変動費化しておくことも重要なポイントであると言えます。
固定費が大きなウエイトを占める代表的な業種には、製造業全般、ホテル、飛行機、新幹線などがあり、稼働率がそのまま利益率となるため、稼働率を最大限まで高め利益の最大化を図ることが肝要です。逆に変動費が大きなウエイトを占める場合には、一製品あたりの限界価格を最大化していく努力が不可欠だと言えます。
●キャッシュ・インは早く、アウトは遅く
ビジネスシステムの構築において注意しなければならないのが、キャッシュ・イン、キャッシュアウトのタイミングです。入金よりも支払いが先にくるネガティブ・キャッシュフローの場合、売上が大きくなればなるほど支払額が大きくなるため、事業規模の拡大に応じて常に資金調達が必要となります。特に独立資本体の企業の場合、ネガティブ・キャッシュフローが従業員の給料支払いを圧迫し、外部委託先への支払いが滞るなどして事業が立ち行かなくなるケースも後を断ちません。
キャッシュ・イン、キャッシュ・アウトは、基本的な事で見落としがちですが、常にポジティブ・キャッシュフローの状態を保てるよう、ビジネスシステムを整えていくことが大切です。
事業特性を把握する
事業特性とは、事業の戦略を左右する、事業や業界に共通する成功要因を指しており、具体的には、顧客特性、サービス特性、競合特性、技術特性、流通特性などが挙げられます。この事業特性には、外部環境に類する事業特性と、内部環境に類する事業特性があり、それぞれの特性を切り分けて考え、成功要因に整合したビジネスプランを構築することが大切です。 外部環境の事業特性には、その事業や業界に関係する規制や法律をはじめ、為替レートや株価などの経済面、関係する文化や流行など時事的な面、さらにはITや通信環境の進歩や新素材の発明など、マクロからミクロまであらゆる事業特性を把握し、ビジネスプランを構築することが望ましいと言えます。
また、内部環境の事業特性を掘り下げるにあたり、内部環境をヒト・モノ・カネの3軸に分類し考慮していくと、ヒトはその業界ならではの組織特性、モノは商品・サービス、流通、価格、そして販売と、マーケティング・ミックス(4P)要素、カネは資本構成(ビジネス・エコノミクス)やキャッシュ・イン、キャッシュ・アウトの特性などが考えら、それらの要素をしっかりと熟考し、成功要因を満たすことが大切です。
●事業特性とブランディング
事業特性を踏まえビジネスプランを構築すると、業界における文化やトレンド、自社製品やサービスのポジショニング、セグメンテーションやターゲティング、そして自社のありたい姿から、自社ブランドの方向性が見えてきます。さらに3C分析(自社/競合/市場の分析)、SWOT分析(強み/弱み/機会/脅威)、4P戦略(製品/流通/価格/プロモーション)が定義されると、自社のあるべき姿が明確となり、独自性のある差別化されたブランド開発が可能となります。
事業特性の把握は、ビジネス成功の確率を高めるだけでなく、差別化されたブランド開発に不可欠であると言えます。事業特性の外部要因はもちろん、インナーブランディングに向けた内部要因もしっかりと把握し、確かな事業戦略を構築することで強い企業づくりを行うことが大切です。
外部パートナー企業へのアウトソーシング
ビジネスシステム構築において重要なウエイトを占めるのが、パートナー企業との協力体制の構築、すなわちアウトソーシングです。多くの企業は、すべての機能を内製化するのではなく、外部のパートナー企業と上手く連携することで生産効率の改善と性能の向上を図っています。こうした外部パートナー企業との連携によりシステムの硬直化を回避し、自社の競争力維持または向上を実現しているのです。
自社内でできること、すべきことと、外部パートナー企業との協力体制を築くことを適切に判断するためには、効率性、収益性、競争力と大きく3つの観点からアウトソーシングを検討する必要があり、そのためには自社の強みを明確化して経営資源の集中化を図ることが大切です。また、効率性、収益性に固執せず、専門企業に任せることで中長期的な競争力の維持・強化を図る観点も忘れてはなりません。
自社で生産施設を持たない組織=ファブレス企業
自社機能アウトソーシングの代表例のひとつに、「ファブレス企業」があります。自社は企画・開発に特化し、生産は外部パートナー企業に委託をすることで業務効率化やリスクヘッジを図り、自社の強みを明確化し他社との差別化を図ります。ファブレス経営には大きく4つのメリットがあります。
01.初期投資を抑えリスクを最小化できる
ファブレス経営の最も大きなメリットは、生産工場の建設や設備投資などにかかる莫大な初期投資を抑え、リスクを最小化できる点にあります。また、生産にかかる人材の確保も不要なため、ランニング時の固定費となる人件費を抱えるリスクもありません。
ファブレス経営により、既に工場を保有する企業に製品製造を依頼することで、迅速な商品開発を行うことが可能となるほか、資金面での負担が少ないため、経営資源に乏しいベンチャー企業であっても自社製品の新規開発が比較的容易となります。
02.スケールメリットによるコストダウン
大きな生産工場を建設し大量生産を行うためには莫大な初期投資が必要となり、大きな工場を維持していくためには大量生産が必要となるため、自社で生産工場を抱えるのは大きなリスクが生じます。逆に、小さな生産工場を建設すると大量生産が難しく、原材料の仕入れや人件費により製品が割高になってしまいます。
一方、ファブレス経営の場合、小ロットからの注文が可能な他、注文ロットが増加した際にはスケールメリットによるコストダウン効果を期待することができます。結果、生産ロット数に応じた価格設定が可能となり、事業戦略に応じた多様な商品展開が可能となります。
03.自社の強みに経営資源を集中できる
企画・開発を得意とする企業が自社の生産工場を持つ場合、社内ワンストップ生産が可能となるため、新たな自社の強みを構築することができます。その反面、経営資源が分散するため、得意分野に集中することが難しくなり、総合的にバランスの取れた企業経営が求められてきます。
一方、ファブレス経営の場合、自社の得意分野に特化することで経営資源を集中し、自社の強みにさらに磨きをかけることができます。これは、企画・開発を得意とする企業、または生産を得意とする企業にもいずれにも該当すると言えます。
04.市場の変化にスピーディーに対応できる
自社で生産工場を抱える場合、最も大きなリスクとなるのは市場の変化です。新素材の登場や生産機器の老朽化のほか、法規制や為替レートの変動、競合他社の動向やトレンドの変化など、製品生産には市場の変化に伴う無数のリスクが潜んでいます。
そうした市場の変化に左右されない生産体制を築けるのがファブレス経営です。製品の企画・開発に集中できる経営は、市場の変化にスピーディーな対応が可能なため、機会の獲得や脅威の回避を可能にします。特に、日進月歩で技術進歩が行われる半導体製造や、トレンドの変化が激しいアパレル業界などに適した経営手法だと言えます。
●アウトソーシングのデメリット
一方、機能のアウトソーシングを検討する際には、デメリットも考慮しておかなければなりません。企業の活動は、それぞれが完全に独立したものではなく、他の機能と密接に関連を持ちながら運営されているため、一部機能をアウトソーシングすることで効率悪化や競争力低下を招く恐れがあるのです。
これを踏まえ企業は、すべての機能を自社内に持つことができない、持つ必要はないことを念頭に、自社優位性(自社の強み)をどの機能に持つのかを明確化し、外部パートナーにどのタイミングでアウトソーシングするかを十分に検討する必要があります。
流通チャネルの構築
市場に製品・サービスを届け、市場シェアの獲得を図るには、流通チャンネルの構築は極めて重要なポイントとなります。一般的には直販または販売委託の利用(卸売)のいずれかの選択肢となりますが、インターネットが充実した現代においては、直販及び販売委託の双方を並行して行うケースが増えています。流通業者利用の際は、流通業者を事業パートナーと捉え、協力してともに成長していくスタンスで挑むことが大切です。
●流通チャネルの幅を決定する
市場への展開範囲や浸透速度は、流通チャネルの幅が大きな要因となります。一早い市場への浸透を図るのであれば多くの流通業者を利用することが望ましいですが、その一方、流通業者間での競争が生じるため、価格競争が起こりやすく、ブランド力低下を招く恐れがあります。ブランド力を維持しながら市場への浸透を図りたい場合には、流通業者の数を制限し、それぞれの担当範囲を広く定めることが大切です。
●流通チャネルに対する動機付け
流通チャネルとなる各社が、積極的かつ能動的に販売を行うためには、魅力的な販売マージンの設定に加え、メーカーとしてどの程度の支援を行なっていくかを決定する必要があります。新製品・サービスの導入機には、流通システムの確率に向け魅力的なマージン設定がなされる場合が多くありますが、販売マージンは一度定着すると少なく減らすことが難しいため、ブランドのビジョンを販売チャネル各社に共有し、中長期的な視点で製品・サービスを育て、利益の分配を図ることが大切です。
内部部門と外部組織の2種類の流通チャンネルをはじめ、流通チャネルの概念にとらわれない3つのチャンネル「フランチャイズ方式」「ランセンス方式」「マルチレベル方式」、シェア獲得に影響を及ぼすチャネルの幅「開放的流通政策」「選択的流通制作」「排他的流通制作」など、流通戦略に関する詳しい解説は、以下「流通戦略」のページでも公開しています。
流通戦略
https://www.paddledesign.co.jp/point/post-173.html
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