明確な目標を示し、意識の共有を図る。

ビジョンの必要性、ビジョン開発の秘訣、ビジョンの実践・調査を伝授します

Introduction

ビジョンとは

ビジョンとは、創業者や経営者の考える「将来ありたい企業の姿」または「事業を通じて成し遂げたいこと」、「企業が実現したい未来の姿」を示すブランド・ステートメントのひとつです。ビジョンは時代背景により適時に見直されることから、中長期的な事業目標とも言い換えることができます。
明確なビジョンを掲げている企業は、自社が進むべき道を社内外に共有し、高い志を持って事業を推進しています。また、ビジョンを明確化する企業の従業員は特にモチベーションが高く、明確な将来像に向け、まっすぐ躍進する姿を多く目にします。企業と従業員の目標が一体化し、仕事の意味や意義をしっかりと理解できている状態です。こうして企業と経営者、経営者と従業員、企業と従業員のすべてが同じ目標に向け足並みをそろえることではじめて、全社一丸となって事業に取り組むことができます。そのために不可欠なのが「ビジョン」であり、企業ブランド、事業ブランド、商品ブランドの実現に、明確なビジョンが不可欠であると言っても過言ではないのです。

●ビジョンと企業理念

ビジョンと混合しがちな「企業理念」ですが、「法人格」と言われる企業には「人格」が存在します。その人格形成の根幹にあるのが「企業理念」です。企業理念は、企業が何のために事業活動を行うのかを言語化した基本的な価値観であり、企業の存在意義にあたります。時代背景により適時に見直されるビジョンの上位概念となり、時代を問わず普遍的な価値観であるため、経営判断にも多大な影響を及ぼすものと考えられます。企業理念の多くは、創業者の倫理観や人生観、思いや価値観が言語化されており、創業から現在まで築き上げてきた、企業文化のDNAそのものであると言えます。

ビジョンの必要性

ビジョンは経営者や経営層をはじめ、多くのステークホルダーに影響を及ぼします。企業経営面においては経営判断や投資・融資など、採用活用においては入社動機の形成から内定承諾に至るまで、日常業務においては従業員のモチベーション向上の原動力にもなります。私たちが行う企業ブランディングにおいて、ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)は企業ブランドに不可欠なブランドスローガンであると同時に、コーポレート・アイデンティティ(CI)の核となる重要なメッセージです。「なぜ、ビジョンが必要なのか。」そんなご質問を頂くことが度々ありますが、ビジョンが必要とされる理由を大きく3点ご説明します。

●ビジョンの必要性その1

ビジョンを策定することで、企業のありたい姿、成し遂げたいことを明確化することができます。ビジョンとは、まさに事業の最終到達地点であり、目的地であると言えます。目的地が明確にできれば、そこまでどのように辿り着くかの戦略を立てることができます。逆に目的地がなければ、戦略の立てようがありません。現代におけるビジネスは、いかなる業種・業界においても競争が激化しており、新業種・新業態であったとしても、いつ誰が類似する事業を行い、ある日突然に競争環境にさらされるか分からないため、安心してはいられません。その際、右往左往しないためにも、ビジョンを明確化し、しっかりとした戦略・戦術を体系立てておくことが大切なのです。

●ビジョンの必要性その2

ビジョンを明確化することで、経営者の判断基準を設けることができます。ビジネスはその運営において経営判断を必要とするケースが日常茶飯事に起こります。特に新事業の立ち上げや新サービスのリリースなどでは、大きな経営判断を必要とします。その判断基準となるのが、「何のために事業を行っているのか」というビジョンであり、ビジョン達成に向けどのような決断をするべきかの判断基準を持つことができるのです。また、ビジネスを創造する際の苦しみや、品質・売上・経営資金・人材への不安など多くの困難にも、目標達成の意欲を与えてくれるのがビジョンなのです。

●ビジョンの必要性その3

ビジョンを明確化することで、ステークホルダーを惹きつけることができます。企業経営や事業運営には、投資家や従業員をはじめ、販売店、仕入れ先、製造委託先、そして消費者など、多くのステークホルダーが関与してきます。より多くの投資を得ることができれば企業経営は安定し、より優秀な従業員が集まれば事業運営は円滑となります。また、販売店や仕入れ先、製造委託先の理解から協力を得ることができれば、競争力の高い商品・サービス展開を行うことができます。そして、消費者がファンとなり高いロイヤルティを得ることができれば売上は安定・向上し、事業の成功率が高まっていきます。だからこそ、ステークホルダーを惹きつける強力な原動力となるビジョンが不可欠なのです。

ビジョン開発の秘訣

多くの企業は自社サイトに経営理念や行動指針、ミッション、ビジョン、バリュー、そして哲学(フィロソフィー)などのステートメントを公開しています。どの企業においても、「心に届き響くメッセージを掲げたい」と考える一方、うまく言語化できず、要点を捉えないボヤッとしたステートメントが多く存在するのも事実です。 だからこそ、ステートメントが正しく発信できている企業には、とても強い意思と可能性を感じることができます。企業ブランドの確立は、ビジョンをはじめとするステートメントの言語化から始まると言っても過言ではないのです。多くの企業が企業ブランドを確立して頂けるよう、ここではビジョン開発の秘訣となる2つの手法をご紹介していきます。

●創業者の思いを言語化する

創業者(経営者)の夢や理想に基づき開発されるのが、最もベーシックなビジョン策定手法です。「こんな会社にしたい」「こんな未来をつくりたい」と創業者が思い描く理想をビジョンとして掲げていきます。ただし、創業者の思い描く理想をそのままビジョンにしただけでは、ステークホルダーに届き、心に響くメッセージになるとは限りません。むしろ、漠然としすぎている、または現実離れしすぎている、逆に冗長的になりすぎているなど、ビジョンとして掲げるには十分でないケースが大半です。このことから、ビジョン策定時には、創業者の思いを的確に評価し言語化する「チェック機能」を設けることが重要です。チェック機能は、ボードメンバーやマーケティングチームの他、私たちブランディングカンパニーを活用する方法があります。

●情報を収集・分析し言語化する

創業者(経営者)の夢や理想はもちろんのこと、事業に影響を及ぼす可能性のある長期的なマクロ環境情報(政治、経済、社会、など)や、業界の動向、自社の経営資源、そして市場の傾向やニーズなどを踏まえビジョンを策定する方法があります。ビジョンは長期的な目標となることから、時間を経ても劣化することのないよう言語化しなければなりません。だからこそマクロな視点で経済や市場と捉え、自社の経営資源に照らし合わせたビジョンを策定することが大切です。創業者の思いを言語化する場合と同様、開発には自社のボードメンバーやマーケティングチームを活用する他、私たちブランディングカンパニーにご依頼頂く方法があります。

ビジョンの実践

ビジョンはあくまでも「理想とする姿」「実現したい未来」であり、ビジョンの実現に向けて実施が成されなければ意味のない言葉に成り下がってしまいます。だからこそ、ビジョンを掲げた後、ビジョンの実現に向けた経営計画に落とし込む必要があります。ビジョンは経営計画のゴールとなり、経営計画はゴール向けたプロセスです。プロセスにはミッション(使命/任務)があり、ミッションを通じてビジョンの達成を図ります。経営計画は時系列で作成し、その時々で何を実行するのかを落とし込んでいきますが、その過程において重要となるビジョンの浸透について、次の2点をご説明します。

●ステークホルダーへの浸透を図る

ビジョンは、経営者が理解しているだけでは実現には至りません。株主や経営層、従業員やそのご家族、事業関係者となる販売店や委託先、さらには消費者など、できる限り多くのステークホルダーに共有できてこそ、実現の可能性を高めることができます。また、多くのステークホルダーの協力を得ることで初めて実現することができるのです。 そのために不可欠なのが、創業者や経営者自らが、ステークホルダーに繰り返し伝え続けることです。社内ステークホルダーには会社説明会や入社式、研修やミーティングなどの場で伝え続けること。その際、ワークショップを行い、ビジョンの達成に向けたアイデアをディスカッションする方法も有効です。また、外部ステークホルダーには、事業計画書、企画書、提案書など、あらゆる書類に落とし込み、繰り返し伝え続けていくことが大切です。 また、言葉として伝えるだけでなく、創業者や経営者自らが実践することが大切です。お客様第一を掲げるのであれば、どのような場合であっても常にお客様第一を貫かなければならないし、社会貢献を掲げるのであれば、常に社会貢献に努めなければなりません。創業者や経営者は常に見られています。トップが実践しないビジョンは決して浸透することはありません

●ビジョンの浸透度を調査する

ビジョン策定後、ステークホルダーへの浸透を図り、経営者および従業員がビジョン達成に向け継続的な実践を図った後は、ビジョンの理解度や浸透度を定期的に調査・検証・分析するのが望ましいと言えます。ビジョンの浸透には、継続的な取り組みが不可欠です。調査結果が望ましくない場合、従来同様の方法で長期間ビジョンの浸透を図るか、別の取り組みを企画しビジョンの浸透を加速させるかを再検討する必要があります。 ビジョンの浸透調査で最も容易なのは、匿名でのWebアンケートです。匿名であれば誰しも正直に回答することができます。選択式の適切な設問を用意し、年1回のビジョン浸透度調査を行なっていきましょう。Webアンケートは無料で使用できるツールもWeb上に多数公開されています。

最後に

ビジョンの浸透に関して大切なのは、「ビジョンをステークホルダーが記憶しているか」ではありません。「浸透したビジョンが経営・運営に生かされているか」です。たとえステークホルダーが一言一句間違いなくビジョンを言えたとしても、それが事業運営に生かされていなければ、なんの意味もありません。浸透を図ると同時に、その意味や意図を正しく共有し、ビジョンの達成に向け一丸となって取り組むことが大切です。

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