利害協力者への労働対価「褒賞・報酬」
適正な評価で、適性な対価を。
被評価者の特性に合わせた、効果的な褒賞・報酬を学びます。
人的資源管理
企業は、ヒト・モノ・カネ・情報の4つの経営資源(四大経営資源)を活用しながら活動を行いますが、4つの経営資源の中でも最も重要とされるのが「人的資源」です。すべては「ヒト」がいて初めて活用できるものであり、ヒトがモノを使い、ヒトがカネを動かし、ヒトが情報を活かすことで初めて、企業活動を行うことができます。ヒトがいなければすべての企業活動は始まらないことから、企業活動の根幹を支えているのが、この「人的資源」だと言えるのです。
人的資源の持つ多様な能力と可能性を効率的に有効活用することがマネージメント側の責任であり、人的資源を動機付けできるか否かが事業の成果を大きく左右することから、人的資源の要素である「採用・人員配置、評価(人事考課)、報酬、賃金、能力開発」などを正しく理解し、適切な管理・運用を行う必要があります。ここでは、人的資源管理のうち「褒賞・報酬」について詳しく解説していきます。
褒賞・報酬
企業が従業員及び役員などを含めた利害協力者への労働対価として支払うものが褒賞・報酬であり、褒賞・報酬には金銭的報酬と非金銭的報酬があります。評価(人事考課)と連動して行われる褒賞・報酬は、査定と育成を並行して行わなくてはなりません。評価が高いにも関わらず報酬が低かったり、逆に特定の人物が低評価の割に高い褒賞を受けたりするなど、褒賞・報酬に不公平が生じると、組織内での不満要因となり、組織全体の連帯感を失いかねません。褒賞・報酬は、従業員や役員など、働くすべての人における大切なモチベーションであることから、褒賞・報酬も明確な基準で見える化し、全社的に公表するなど、透明性を保つ必要があります。
●金銭的報酬
金銭的報酬とは、給料・ボーナスなど、対価となる現金そのものを指しています。また、金銭的報酬には、現金ではない福利厚生や特別手当も含まれます。金銭的報酬は、分かりやすい対価であり人のモチベーションを高めることができる一方、上限があると言われています。例えば、給料やボーナスが上がると従業員は喜び、さらに高い報酬をえようとモチベーションが上がりますが、ある一定の給料に達すると以前ほどの喜びを感じなくなります。これは、金銭的な欲求は既に満たされているからに他なりません。この場合、モチベーション向上に必要不可欠となるのが非金銭的報酬です。
●非金銭的報酬
非金銭的報酬とは、昇進・昇格、仕事のやりがいや達成感など、直接的な現金ではない対価を指しています。非金銭的報酬は、機会や場、そして称賛や承認など、無形のものが比較的多く、金銭的報酬と比べ可視化しづらいものが多く含まれています。例えば、昇進・昇格における権限の付与や、重要な仕事を任されることのやりがい、そして結果に対する他者からの表彰や称賛などがあります。
被評価者の特性に合わせた効果的な褒賞・報酬
従業員のモチベーション向上には、褒賞・報酬(金銭的報酬・非金銭的報酬)は必要不可欠です。しかし褒賞・報酬は、被評価者となる従業員や役員の特性により、効果的な褒賞・報酬の種類が異なると言えます。被評価者の特性を理解せず、画一的な褒賞・報酬を付与するのでは、最良の効果を生み出すことはできません。 米国のMARITZ社が2016年に発表した「Six Distinct Employee Types Based On Reward Prederences」では、従業員にはモチベーション向上をもたらすタイプがあるとして、その特性を褒賞・報酬のタイプ別に6つに分類しました。この分類は、アメリカ全土からランダムに選出された男性501名・女性502名、合計1003名の従業員(18〜65歳対象)を分析したデータから導き出されています。
01.報酬狙いタイプ/全体の22%
金銭的報酬と非金銭的報酬の両方を求めるタイプのグループ。自身の給料・ボーナス及び昇進・昇格・そして表彰などに高い関心があり、他者のサポートや、やりがいのあるプロジェクトなどへの意欲は低い傾向にある。効果的な報酬は、「ギフトカード」や「旅行」など。女性が58%を占め、若い従業員に多い。
02.巣作り動物タイプ/全体の20%
仕事と生活のバランスを重要視するタイプのグループ。家族より仕事を優先させる意識はなく、家族と離れての社員旅行や会議出席などに懸念がある。家族と時間を過ごせるような報酬を最も好む。効果的な報酬は、「自由な出社制度」、「休暇」。「家族とのディナー」など。男性が54%を占め、中高年の従業員に多い。
03.合理主義タイプ/全体の19%
金銭的報酬を最も求めるタイプのグループ。自身の給料・ボーナスに高い関心があり、仕事のやりがいや周囲からの認知(褒められる・認められるなど)などの、非金銭的報酬には興味が無い。効果的な報酬は、「ボーナス」。女性が59%を占め、一般的に仕事への不満が多い傾向にある。
04.自由人タイプ/全体の17%
仕事の柔軟性に喜びを感じるタイプのグループ。既に自由裁量があり、金銭的満足や地位的安定を得ている高役職者層に多くみられる。効果的な報酬は、「柔軟な時間」や「仕事の裁量」、そして「面白くやりがいのあるプロジェクトを選ぶ権利」、「会議出席の機会」など。中高年の男性が55%を占め、高所得で有能な従業員が多い。
05.賞賛要求タイプ/全体の16%
自身の仕事に関心を持たれることを好むタイプのグループ。承認欲求が強く、多くの人に知ってもらい認めてもらうことに喜びを感じる。休暇や自由な働き方などには興味・関心が薄い。効果的な報酬は、「上席の褒め言葉」や「書面による表彰」、または「同僚からの賞賛」など。男性が54%を占める。
06.上昇志向タイプ/全体の8%
仕事中心のライフスタイルに満足しているタイプのグループ。金銭的報酬や休日、柔軟な働き方などには興味が薄い。仕事好きで、会社で昇進・昇格していくことを目標にしている。効果的な報酬は、「幹部との食事」や「他の社員のサポート」、または「自分と異なるポジションの人々と働く機会を得ること」など。男性が68%を占め、内42%が34歳以下、66%が部下を持つ管理職者。また、30%が経営陣。さらに20%が最初の就職先として働く従業員。
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