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周年を機にMVV(ミッション/ビジョン/バリュー)を再浸透させる方法
周年を、理念が再び息づく転換点に。
周年を機に理念を再定義し、MVVを行動と文化へ浸透させるために。
なぜ今、MVVの再浸透なのか
企業を取り巻く環境が急速に変化するなかで、組織の成長と多様化は新たな価値を生む一方、共通の判断軸や目的意識を見失うリスクも高まっています。
こうした時代において、MVV(Mission/Vision/Value)は単なる理念ではなく、変化に適応しながら一貫性を保つための“経営の中核”としての機能を求められています。
周年という節目は、そのMVVを見直し、再び組織の隅々まで浸透させる絶好の機会です。過去の歩みを振り返りながら、次の10年に向けて「何を守り、何を変えていくのか」を明確にし、理念を経営と現場をつなぐ実践的な指針へと再構築する。
その取り組みこそが、これからの持続的成長を支える基盤づくりにつながります。

周年は戦略的リセットの機会
周年は、単なる記念行事ではなく、企業の過去・現在・未来を接続するマイルストーンとしての意義を持ちます。
事業が拡大し、組織が多様化する中、創業時に掲げた理念や価値観は、時間の経過とともに社員の間で解釈がばらつく傾向があります。
周年の節目は、こうした変化を整理し、企業としての存在意義(Mission)とこれから目指す方向性(Vision)を再定義する好機だと言えます。
また、過去の歩みの振り返りは、単なる回顧ではなく、何を守り、何を変えていくべきかを見極めるための戦略的プロセスでもあります。
創業期から現在に至るまでの意思決定や挑戦の軌跡を再確認することで、企業文化の本質を明確にし、次の成長フェーズに向けた共通認識を形成することができます。
したがって、周年を「お祝い」として消費するのではなく、自社のアイデンティティを再構築し、次の10年に向けた経営基盤を整える節目として位置づけることが重要です。
理念が組織で機能し続けるために
どれほど優れた理念であっても、それが日常業務の中で意識されなくなれば、次第に形骸化していきます。
MVV(Mission/Vision/Value)が形骸化する最大の要因は、理念が経営層のメッセージとして留まり、現場の意思決定や行動にまで反映されていないことにあります。
この状態が続くと、次のような問題が発生します。
・経営層と現場の間で理念の解釈に乖離が生じ、判断基準が不明確になる
・組織内で意思決定の方向性が統一されず、一体感が失われる
・企業文化が徐々に分断され、ブランドとしての一貫性が損なわれる
こうした“ズレ”は、日々の小さな判断の積み重ねによって組織全体に広がり、結果として企業の持続的成長を阻害します。
したがって、MVVを再浸透させる取り組みは、単なる理念共有ではなく、組織の判断軸と行動基準を再整備するプロセスとして捉える必要があります。
周年という節目に改めてMVVを見直すことは、理念を再び「言葉」から「行動指針」へと転換し、変化の激しい環境下でも一貫した意思決定を支える基盤を再構築する機会となります。
理念を経営の判断軸として再機能化する
MVVの再浸透は、単なるスローガンの再掲や理解促進の取り組みではありません。その本質は、理念を組織全体の意思決定や行動の基盤として再機能化させることにあります。
企業が成長するにつれ、社員の世代・職種・価値観は多様化します。
この多様性自体は企業の強みとなる一方で、MVVの解釈や実践方法が個々にばらつくと、組織としての一体感や判断の一貫性が損なわれるリスクが高まります。
したがって、再浸透の目的は、理念を再び共通の行動基準として機能させることにあります。
MVVが日常業務に根づくことで、次のような効果が期待されます。
・戦略と現場の整合性:組織全体で意思決定の軸が揃い、方向性の統一が図られる。
・文化の一体感:社員が共通の目的意識を持ち、協働や連携が自然に生まれる。
・ブランドの一貫性:社内外において行動や発信に統一感が生まれ、信頼と共感が強化される。
つまり、MVV再浸透の本質は、理念を言葉から行動に変換する組織能力の再構築にあります。周年という節目は、そのプロセスを体系的に実行し、企業文化の再生と次世代への継承を実現する絶好の機会といえます。
MVVとは?再浸透の鍵となる3要素

MVV(Mission/Vision/Value)は、企業がどこへ向かうのか、なぜ存在するのか、どのように行動するのかを定義する根幹の要素です。
周年という節目にMVVを再浸透させるためには、これらを単なるスローガンとしてではなく、組織の意思決定と行動を支える“実践的な指針”として再認識することが重要です。
Mission(存在意義):なぜこの会社があるのか
Missionは、企業が社会の中で果たすべき役割を明確にするものです。
「何のために存在しているのか」「どのような価値を提供しているのか」を再確認することで、組織の共通の目的意識を取り戻します。
周年のタイミングでは、創業時の想いと現在の事業の意義を重ね合わせることで、Missionを“今の時代に生きる言葉”として再定義することが大切です。
Vision(目指す未来):どんな未来をつくりたいのか
Visionは、組織が中長期的に目指す姿を示す「未来の設計図」です。
これまでの成果を振り返ると同時に、次の10年でどのような社会的価値を実現していくのかを明確にすることで、社員全体の意識を未来へと向けることができます。
周年の節目で行うVisionの再共有は、過去から未来へのストーリーを再接続し、組織が進むべき方向を一致させる重要な機会となります。
Value(価値観・行動指針):どんな行動で実現するのか
Valueは、MissionとVisionを日常の行動に結びつけるための羅針盤です。
社員一人ひとりが「どのように行動すればMVVを体現できるのか」を具体的に理解できることが重要なため、抽象的な言葉ではなく、行動事例やエピソードを交えた具体的な表現として伝えることが大切です。
Valueが日常の判断基準として機能すれば、MVVは「語られる理念」から「使われる理念」へと進化します。
再浸透のポイント:「共感」「理解」「行動」の3段階を意識する
MVVを実際に組織へ根づかせるには、理念を段階的に浸透させる設計が必要です。
そのための基本ステップは次の3つです。
1.共感:理念の背景や意図を理解し、心から納得できる状態をつくる。
2.理解:自分の言葉で説明できるようにし、理念の意味を自分ごと化する。
3.行動:日常業務の判断やコミュニケーションの中で、理念を行動に移す。
この3段階を踏むことで、MVVは単なる言葉から、組織の“文化的資産”へと変化します。周年は、このプロセスを体系的に実行し、理念を再び組織の中心に据える絶好の機会です。
周年を機にMVVを再浸透させる5つのステップ

MVVの再浸透は、単発のキャンペーンではなく、理念を組織文化として再構築するための継続的なプロセスです。周年という節目を起点に、次の5つのステップで体系的に進めることで、理念を“言葉”から“行動”へと定着させることができます。
【Step1】振り返りと再定義
まずは、創業の原点に立ち返り、これまでのMVVを整理・再評価することから始めます。過去に掲げた理念が今も現状に適しているのかを見極め、必要であれば「今のフェーズに合った言葉」へと再定義します。
その際、経営層だけでなく、中堅層や若手社員など多層的な視点を取り入れることが重要です。組織全体で対話を重ねながら言葉を磨くことで、理念が現場にも“自分たちの言葉”として浸透しやすくなります。
【Step2】ストーリーテリング化
理念を理解させるのではなく、「語れる状態」にすることが再浸透の第一歩です。
経営者や創業メンバーが語るMVVの背景だけでなく、社員一人ひとりが自分の経験を通じてMVVをどう体現してきたのかを共有することで、理念が生きた物語になります。
映像、インタビュー記事、ドキュメンタリーなどを通じて、理念と企業の歴史・挑戦をつなげて伝えることが、共感を広げる効果的な手法です。
【Step3】周年イベントでの体験設計
周年記念イベントは、MVVを「感じる」ための体験の場として機能させることができます。セレモニーとしての記念行事に留めず、参加者が理念を自らの行動と重ねて考えられる設計が重要です。
例えば
・MVVをテーマにした展示や映像コンテンツの制作
・社員が自ら理念を語るスピーチやアワードの実施
・MVVを題材にしたワークショップ・トークセッションの開催
このような体験を通じた理解が、理念を「自分ごと化」するきっかけとなります。
【Step4】日常への落とし込み
イベントで生まれた共感を一過性で終わらせないためには、MVVを日常の仕組みに組み込むことが大切です。評価制度・社内コミュニケーション・マネジメントの場など、日常的な接点に理念を反映させることで、行動との一貫性が生まれます。
具体例:
・行動評価基準にMVV項目を組み込む
・社内ポスターやデジタルサイネージで継続的に発信
・1on1や会議でMVVに基づくフィードバックを行う
こうした日常への定着が、理念を「文化」として根づかせる決め手となります。
【Step5】継続的な対話とアップデート
MVVは一度定義して完結するものではなく、組織の成長や環境変化に合わせて進化し続ける“生きた指針”です。半年・1年ごとに振り返りの場を設け、「どのように体現されているか」「今後どの領域を強化すべきか」を社員とともに確認します。
こうした定期的な対話を通じて理念の意味を更新し続けることが、MVVを持続的に機能させ、組織文化として根づかせるための基盤となります。
企業の想いを“かたち”に|MI/VI開発事例

企業の理念や事業の本質を、社会に伝わる“かたち”として可視化するのがMI(Mind Identity)・VI(Visual Identity)開発です。ここでは、周年やリブランディング、新事業立ち上げなどの節目に取り組んだ、MI/VI開発の実例を紹介。
それぞれの企業が持つ独自のストーリーや価値観を、ロゴやネーミング、ビジュアルコンセプトにどのように落とし込んだのかをご覧いただけます。
ブランドの“核”を再定義し、未来へつなぐためのデザインアプローチを感じてください。
企業ブランディング事例vol.1|株式会社アクティサポート
新たに策定したVALUE「力強い警備」と「美しい警備」を、2色の帯によるロゴで表現。警備の質の高さ(強さ)とスマートさ(美しさ)の両立を視覚化しました。旗をモチーフにすることで、社会に向けて同社の誇りと信頼性を掲げる意味を込めています。
企業ブランディング事例vol.2|シモダL&C株式会社
創業100周年を機に、「挑む企業をつなぎ(Link)、革新をつくる(Create)」という新ミッションを体現する社名「シモダL&C」を提案。旧社名を継承しながら、創業者の理念「企業は永遠なり」を次代へとつなげました。ロゴでは「L」と「C」を象徴的に配置し、成長と創造を表現しています。
企業ブランディング事例vol.3|株式会社フロアエージェント
最先端テクノロジーを象徴するブルーの柱と、確かな施工技術を示すグレーの柱を融合したロゴを開発。「技術」と「技能」という二つの強みを一体化し、進化と前進を象徴するデザインとしました。フロアエージェントらしい確かな品質と未来志向を表すシンボルです。
企業ブランディング事例vol.4|リフウェル株式会社
ブランドテーマ「こころとひかり」のもと、挑戦を続けるLifwellの姿を象徴化したロゴを開発。創業者と会員一人ひとりの想いが光となり、共に輝く未来を描くデザインとしました。想いが連鎖し、つながりが広がる様子を表現することで、ブランドの原動力を可視化しています。
事業ブランディング事例vol.5|ゆめいろ・なないろ保育園
園名に込められた「多様性」と「個性」を軸に、子どもたち一人ひとりの成長を10粒の“種”で表現したロゴを開発。異なる色と形の種が輪となり、触れ合いながら育つ姿をデザインしました。優しいカラーリングで、保育園の“寄り添う姿勢”をあたたかく伝えています。
成果を生むMVV浸透のデザイン手法

MVV(Mission/Vision/Value)を組織に根づかせるためには、理念を「理解させる」だけでなく、「感じさせ、行動につなげる」設計が必要です。そのために有効なのが、ビジュアル×体験×コミュニケーションを統合したデザインアプローチです。
理念を抽象的な言葉で終わらせず、組織の空気として浸透させること。それが、成果を生むMVV浸透の鍵となります。
ビジュアル×体験×コミュニケーションの融合
MVVは、伝えるだけでは浸透しません。社員が理念を「見て」「感じて」「共有する」仕組みの中で初めて、自分ごととして意識されるようになります。
・ビジュアル:ロゴ、ポスター、映像、冊子などのデザインを通して、理念を視覚的に理解しやすくする。
・体験:周年イベントやワークショップなど、理念を実際に感じ取れる体験設計を行う。
・コミュニケーション:日常の対話や社内広報で、理念を繰り返し共有し続ける。
これらを有機的に組み合わせることで、理念は「掲げるもの」から「使われる文化」へと昇華します。
MVVを可視化するデザインアプローチ(ポスター/映像/空間)
理念は、言葉だけでは十分に伝わらないことがあります。だからこそ、デザインを通じて“見える化”することが大切です。
ポスターやサイネージは、日常の視界に理念を自然に溶け込ませるツールとして機能します。映像は、経営者や社員の想いをストーリーとして伝えることで、感情的な共感を生み出します。
また、オフィス空間のデザインにMVVを取り入れることで、理念を“働く環境そのもの”に埋め込み、行動と一体化させることができます。
視覚・空間・ストーリーの力を組み合わせることで、MVVは組織の日常に息づく存在になります。
社員参加型ワークショップやインターナルブランディングの設計例
理念浸透を「トップダウン」だけで終わらせず、「社員自身が語り、考える場」を設けることで、MVVはより深く定着します。
ワークショップは、社員がMVVを自分の業務や行動にどう結びつけられるかを考える機会をつくります。このプロセスは、理念を“体験的に学ぶ”時間であり、同時に組織文化を再構築する時間でもあります。
また、社内報やイントラ、MVVアワードなどのインターナルブランディング施策を併用することで、日常的な対話が生まれ、理念を共有する文化が継続的に育っていきます。
MVV浸透の最終的な目的は、社員一人ひとりが理念を行動に変換し、それを誇りとして語れるようになること。そのための「共感」「体験」「表現」をデザインすることが、成果を生む浸透施策の核心です。
まとめ|周年を“理念の再起動”へ
周年は、過去を振り返るための行事ではなく、未来へ向けて組織の軸を再構築する転換点です。MVVを再定義し、言葉として掲げるだけでなく、行動・文化・デザインへと展開していくことで、社員一人ひとりの意識と行動がつながり、企業は新たな一体感と成長の推進力を手に入れます。
理念が生きて働く組織へ。周年はその再起動の瞬間です。
ブランディングチーム
パドルデザインカンパニーには、プロジェクト全体を統括するプロデューサーやブランディングディレクターをはじめ、コピーライター、エディトリアルライター、アートディレクター、ブランドデザイナー、Webデザイナー、映像ディレクターなどが在籍し、プロジェクト毎に最適なチーム編成を行うことでブランドを最適解へと導いていきます。
記事制作/プロデューサー
ご相談や課題を受け、実施プランの策定やプロジェクトの大まかなスケジュールなどを策定します。また、プロジェクトのゴール設定やマーケティング環境分析、市場分析などを行い、市場で勝ち抜くブランド戦略提案などを行います。
Producer
CEO 豊田 善治
東京のブランディング会社 パドルデザインカンパニー

パドルデザインカンパニーは、5職種で編成されたブランディングカンパニー。ブランドコンサルティングとデザイン会社の両側面を持ち合わせ、クライアントの課題に実直に向き合います。南青山に構える本社を主な拠点に、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3件を中心に、北海道から沖縄まで全国対応可能です。






