ブランディングの成否を分ける7つのポイント
ブランディングの成功には、必要不可欠な取り組みがある。
準備から発信まで「ブランディングの成否を分ける7つのポイント」を伝授します。
ブランディングの成否を分ける7つのポイント
ブランディングにより企業や商品・サービス価値の最大化を図る取り組みは、近年多くの企業で取り組まれてきましたが、多くの企業で「デザインの統一を図ること」と誤った認識を持たれているケースに数多く直面しています。確かに「デザインの統一」はブランディングの一環ではありますが、デザインの統一だけではブランディングを図ることはできません。大切なのは、以下に紹介する7つのポイントを策定し、消費者への正しいブランド体験を提供することにあります。
Point 1 経営者の決意
ブランディングの成否に最も影響を及ぼすのは、経営者の意思と決意です。自社または自社製品・サービスをどのようなブランドに育てていきたいのか、その思いが明確であり、強い決意があるほど「ありたいブランド像」への推進力が強くなると言えます。また、経営者だけでなく、ブランドを体現する従業員たちの協力なくしてブランディングは為し得ないため、従業員の意思も同様に重要な要素となってきます。
いずれにせよ、ブランディングの実施に重要となるのは、トップが先頭に立ち、強力なリーダーシップのもと、トップダウンでブランディングを推し進めていくことです。もしボトムアップであったとしても、トップの強い後押しがあれば、ブランディング活動はスムーズに進行することができます。その中ですべての従業員の協力を仰ぎ、同意と共感を得ていくことが重要なポイントであると言えます。
Point 2 市場ニーズと顧客インサイト
企業が商品・サービスの差別化を図るプロセスの第一歩として、まずは市場ニーズを正しく把握し、顧客インサイト(人を動かす隠れた心理)を発掘することが重要となります。顕在化された市場ニーズは、定量的なマーケティング調査である程度知ることはできますが、顧客インサイトの掘り起こしは容易ではありません。
従来から行われているグループインタビューやデプスインタビューなど、定性的なマーケティング調査に加え、顧客の行動分析、検索ニーズやSNS分析など、あらゆる手法を活用して新たな顧客インサイトを発見することが大切です。
Point 3 競合との差別化
ブランディングにおいて最も重要なポイントは、言うまでもなく競合他社との差別化です。自社の独自性、すなわち他社との違いがあって初めて消費者から選ばれる存在になることができます。では、自社の独自性・他社との違いはどのようにして創るのか。そのためには、Point2に記載した市場ニーズと顧客インサイトから、市場における自社独自の「ブランドポジション」を定めていく必要があります。
ブランドポジションの策定は、自社の強みや市場ニーズ、そして顧客インサイトを踏まえ考察していきますが、市場での競争を想定し、そこに競合他社を加え検討していく必要があります。また、現在だけでなく、今後どのようなブランドを目指すのか、自社ブランドの将来を見据えた上でのブランドポジション策定が不可欠です。
さらに、違いの明確化を図るためには、ブランドとしての人格「ブランドパーソナリティ」の設定も有効な施策であると言えます。ブランドポジショニングとブランドパーソナリティ。この2つの策定は、競合他社との差別化や今後のブランド運用に大きな役割を果たします。
●ディメンションフレームワーク
Jennifer Aakerにより提唱されたブランドパーソナリティ策定のためのフレームワークです。ブランドパーソナリティを大きく5つに分類し、自社ブランドがどの属性に該当するかを考えていきます。方法は、自社ブランドを想起したときに思い浮かぶ言葉を3〜5程度書き出します。その言葉が5つの属性のうち、どこに当てはまるかを考えていきます。自社ブランドを想起した言葉が最も多い属性が、自社ブランドの持つブランドパーソナリティです。属性は、必ずしも1つである必要はありませんが、数が多ければ多いほど「特徴のないブランド」ということになってしまうため、多くても2つまでにする方が望ましいと言えます。 ちなみに、言葉を書き出す際は、顧客が持つブランドイメージを的確に言葉にすることが大切です。
●アーキタイプフレームワーク
Carl Gustav Jungの理論に基づいたフレームワークです。ブランドが望む顧客像からブランドパーソナリティを定めていく点が特徴です。ディメンションフレームワークが5つの分類であったに対し、アーキタイプフレームワークは12の分類と価値観、そしてその価値観を持つパーソナリティが最終的に目指していることを細かく分類されています。
Point 4 ブランドプロポジションとブランドプロミスの策定
ブランドプロポジションは直訳すると「ブランドの定義」です。自社ブランドをどのようなブランドに育てていくか、どのようなブランドだと思われたいかを言語化することで、ブランドの中核概念を明確化していきます。ブランドプロポジションは、製品戦略、流通戦略、価格戦略、そしてコミュニケーション戦略や人事戦略など、企業が行うすべての事業活動の原則となることから、ブランディングにおいてとても重要な戦略であると言えます。
また、ブランドプロミスは直訳すると「ブランドの約束」です。企業が消費者に向け保証する品質や機能を指しており、企業ブランディングにおいては、ミッション・ビジョン・バリューなどのブランドステートメントとして明示していくのが主流となっています。
ブランドプロポジションとブランドプロミスを策定することで、以降の事業戦略におけるすべての判断基準が明確化されるため、自ずと自社が目指すブランド像へとブランディングを推進していくことができます。
Point 5 ブランドの具現化
前項で策定したBI(ブランドアイデンティティ)の顧客体験に向け、そのブランドらしい言い方(バーバル・アイデンティティ)や見え方(ビジュアル・アイデンティティ)などのVIを定めていきます。ここで大切なのは、すべてのタッチポイントでその「ブランドらしさ」を統一して具現化し、一貫性のあるブランド体験を提供することです。
企業ブランディングであれば、名刺・封筒などのビジネスツールから、コーポレートサイト 、会社案内パンフレット、動画・映像などが主に該当します。商品ブランディングであれば、前記に加え、商品パッケージ、ブランドサイトやECサイト、ブランドムービー、広告、店舗、展示会、さらには営業マンのセールストークや店舗スタッフの接客に至るまで、すべてのコミュニケーションが該当します。
こうした顧客体験を積み重ねることで、ブランドの世界観を消費者と共有し、自社ブランドのファンを獲得していきます。また、ファン層のブランドロイヤルティを高めていくことでブランドの拡散を図り、市場において唯一無二の選ばれる存在を目指していきます。
Point 6 ブランドの社内浸透
ブランディングの目標は「ブランド価値の最大化」であることは言うまでもありませんが、そのために不可欠なのがブランドの社内浸透です。日本では、社内浸透よりも外部コミュニケーションを優先する企業が多く見られますが、ブランドを実践するのは自社従業員に他なりません。ブランドが社内に正しく浸透していなければ、外部への正しいコミュニケーションが正しく図れないことから、まず優先すべきはブランドの社内浸透であると言えます。
そのために効果的な施策がブランドメッセージの開発です。ここで開発する代表的なブランドメッセージには「ブランドコンセプト」や「タグライン」が挙げられます。前項で定めたブランドプロミスやブランドステートメントをメッセージ化し、ワンボイスとして社内に伝え続けることで、社員教育の基本概念を従業員に根付かせていきます。また、以降で行われる様々な社員教育に関しても、開発したブランドメッセージに帰結するよう計画することで、自社ブランドに相応しい言動のできる従業員を育成していきます。
経営陣をはじめ、すべての従業員がブランドを正しく理解し、ブランドプロミスを実践することで、はじめて「ブランド価値の最大化」を図ることができます。ブランドをマネジメントするのではなく、ブランドでマネジメントすることが重要です。
Point 7 ブランドの外部コミュニケーション
ブランドの認知度向上から売上拡大を焦るばかり、多くの企業でブランドを犠牲にしたインパクト重視のプロモーション活動が展開されています。インパクト重視のプロモーションは、短期的な視点で見れば売上に直結する施策が多くあると言えますが、一方、一度根付いたブランドイメージの転換は容易では無いため、ブランディングにとって一過性のプロモーション活動は、マイナスにしかならないと言っても過言ではありません。
このことから、ブランド浸透に向けた外部へのコミュニケーション活動のすべては、前項で策定したVI(ビジュアル・アイデンティティ)に準拠し、正しいブランド体験に向けたコミュニケーション戦略を図ることが、ブランディングにとって、とても重要であると言えます。
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