取引コストの最適化
自社の営業力が、外部の影響力を抑止する。
資源供給者と資源需要者間に発生する「取引コスト」を学びます。
資源供給者と資源需要者のパワーバランス
企業・組織は、単独で自立した運営は難しく、多くの場合、外部組織に依存することではじめて存続することが可能となります。資源には、生産に必要な仕入れや運送をはじめ、販売チャネルなどがありますが、組織の生存に不可欠な資源が希少で、限られた供給者からしか入手できない場合、その資源供給者は資源需要者に対し大きな影響力を持つことになります。逆に、仕入れが容易で多くの資源供給者を比較・検討できる状況にある場合、資源供給者の影響力は小さく、資源需要者が大きな力を持つことが可能となります。
●資源供給者の持つ影響力
資源供給者が希少な資源(生産財、販売チャネルなど)を有しており、資源需要者が他社(他者)より仕入れが困難な場合、資源供給者の持つ影響力は強くなります。例えば、資源供給者の意図を販売方針や販売方法に反映したり、資源需要組織の組織形態や人事に影響を及ぼすなどが考えられます。
●資源依存を回避する戦略
前記の資源依存を回避する代表的な手法には、代替えとなる他の外部組織の確保があります。生産財であれば、新たな仕入れ先の開発や代替え品の開発があり、販売チャネルであれば、別ルートでの販売やEC販売、自社運営店舗の展開などが考えられます。その他、事前に契約の取り決めを行う、自社組織の意思決定機関に資源供給者を参加させる、共通の目的を持つ合資会社を設立するなどの方法も考えられます。
取引コスト(取引費用)の最適化
アメリカの経済学者 オリバー・ウィリアムソン(Oliver Eaton Williamson)は、ロナルド・H・コース(Ronald H.Coase)の提唱した「取引コストの経済学」を継承し、市場取引におけるコストの存在とその影響力を考察・発展させました。オリバー・ウィリアムソンの提唱では、複雑な環境下の市場取引には「取引コスト(取引費用)」という概念が発生し、企業は多大な取引コストの回避に向け、自社資本に内部化した組織取引の形態へと移行するとしています。また、内部下コストが取引コストを上回るケースにおいては、市場取引で仕入れる形態が採用されるとしています。なお、取引コストには主に以下3点が挙げられています。
①情報探索(調査)コスト
どの企業・組織が最も良い条件で資源を提供できるかを探し出すための情報探索(調査)コスト。インターネットや展示会での探索などが該当します。
②交渉コスト
資源供給者と資源需要者の双方の合意に至るまでに必要とする、交渉に生じるコスト。仕入れ価格や供給ロッド、納期や支払い条件など、あらゆる条件交渉が該当します。
③監視コスト
合意した条件通りに取引が実行されているかの確認コスト。もし実行がされていなければ条件通りの取引を促し再度の確認が必要となります。また、法的手段での対応なども監視コストに該当します。
組織取引のリスクとメリット
前記した「組織取引の形態への移行」とは、資源供給者(取引先企業)を自社で保有する(自社組織の傘下に収める)垂直統合を指しており、内部化とも呼ばれていますが、組織取引には多くのコストが発生します。流通チャネルを例とすると、物流倉庫や店舗の開発・運営・管理コストなどが内部化コストに該当します。理論上は、取引コストが内部化コストを上回る場合に組織取引が選択されるとなっていますが、企業や市場を取り巻くあらゆる環境が加味され、中間組織(中間取引)という取引形態が取られる場合も多くあります。中間取引には様々な形態があり、企業・組織の方針や事業戦略により取引形態が異なります。
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