組織の原則
事業の加速に向け、組織の原則を理解する。
基本概念と設計原理など、組織の原則を学びます。
組織の原則
組織は、経営目的のために形成され、目標達成に向け戦略が策定されます。組織と戦略は密接な関係にあり、相互の整合性が不可欠だと言えます。組織の目的と戦略に整合性がなければ、いくら多くの経営資源を投下したとしても、目標達成は困難であると言えます。この組織と戦略の考え方には、相反する2つの有名な説が唱えられています。
一つは、アルフレッド・D・チャンドラーの「組織は戦略に従う」、もう一つは、イゴール・アンゾフの「戦略は組織に従う」です。この相反する2つの考え方について理解し、実際の経営に生かせる組織マネジメントのあり方を考えていきます。
●「組織は戦略に従う」と「戦略は組織に従う」の違い
「組織は戦略に従う」と「戦略は組織に従う」の違いは、組織が先か、戦略が先か、という点にあります。サッカーやラグビーなど、フィールド内で自由にフォーメーションを組み立てるスポーツに見立て考えてみます。攻撃重視・守備重視・バランス重視など、攻守における戦略を先に策定し、その戦略に必要なフォーメーション(組織)を組み立てるのが「組織は戦略に従う」です。
一方、フォーメーション(組織)を先に策定し、次いで戦略を策定するのが「戦略は組織に従う」となります。 「組織は戦略に従う」の考え方は、目標達成に向け適材適所で人材を配置する、属人的な戦略であるのに対し、「戦略は組織に従う」は組織のあり方を重視し、そこに人材を配属する組織的な戦略であると言えます。どちらも必ずしも誤りではなく、組織や事業、業界特性などにより臨機応変な対応が必要だと言えます。
●チャンドラーの「組織は戦略に従う」
チャンドラーの研究結果では、企業の国際化や事業の多角化を効果的かつ効率的に機能させるには、権限移譲された事業部制の組織が必要であり、事業部制を機能させるための本社機能のあり方が必要だとして「組織は戦略に従う」の命題を1962年に提唱しました。事業部制では、日々変化する環境に柔軟に対応する戦略を策定するため、戦略のあり方で組織が可変されていきます。事業部制は、一定領域に特化することで専門的な知見を養うとともに、迅速な決済が可能になるなど、一定以上の企業規模に適した組織構造です。
●アンゾフの「戦略は組織に従う」
アンゾフは、チャンドラーと同様に企業の国際化や事業の多角化を研究し、新規の戦略が策定されても、組織文化(企業文化)や組織の抵抗からほとんどが実を結んでいない実態から、チャンドラーとは対照的な「戦略は組織に従う」の命題を1979年に提唱しました。組織は、目標達成に向け戦略が策定されますが、そこには今まで培ってきた組織文化(企業文化)があり、新たな戦略により組織の変革を行おうとも容易には行かない現実があります。このことから立案する戦略は、「現状の組織形態に最新の注意を払い策定されなければならない」とし、戦略ありきで組織を編成するのではなく、組織に合わせた戦略を策定することが必要だと唱えました。
●経営環境や課題に応じて考慮する2つの命題
「組織は戦略に従う」と「戦略は組織に従う」は、対照的な命題ではありますが、どちらも決して間違いではなく、企業・組織の経営環境や課題により臨機応変に適応させるべき考え方であると言えます。多数の従業員が関わり、長年事業を営んできた企業・組織では、戦略により組織形態を可変するのは容易ではなく、組織の反発も考慮されることから、組織の現状を踏まえ、戦略を落とし込んでいくことが大切であると言えます。
一方、中小企業は指揮・命令系統がトップダウンで明確に行われる傾向が強く、比較的柔軟な対応が可能であることから、戦略の遂行に最適化された組織の再編も容易であると言えます。さらにベンチャー企業では、組織のしがらみも比較的少なく、柔軟な対応も可能であることから、戦略の遂行や目標の達成に最適化された組織形態を編成することが成功への最短距離であると言えます。いずれであっても、経営環境や課題に応じた戦略と組織のあり方を変革し続けることが、企業・組織の成長・発展に不可欠であると言えます。
組織の基本概念と設計原理
組織は、機能・役割毎に業務を分担し、専門性を高めることで生産性の向上を図ります。また、部門別に階層を形成し、責任の定義や権限委譲を行うことで、組織の最適化を図ります。組織はライン機能とスタッフ機能で形成され、相互関係を築くとともにバランスよく機能することで、初めて業績向上を図ることができます。
●機能・役割別の分業(水平分業)
組織では、機能毎に業務を分業し、専門性を高めることで生産性の向上を図ります。製造業の場合、例として、営業部、設計部、製造部、品質管理部、施工部、総務部、経理部、人事部などの分業が挙げられます。
●階層形成による分業(垂直分業)
組織では、部門毎に階層を形成し、責任の定義や権限委譲を行うことで組織の最適化を図ります。一般的な企業・組織の場合、主任、係長、課長、部長、統括本部長(ゼネラル・マネージャー)、常務取締役、専務取締役、代表取締役社長などの階層(役職)が挙げられます。
●ライン機能とスタッフ機能
経営学の組織構造論に機能=職能(以降、機能で統一)という概念があります。この機能にはライン機能とスタッフ機能の2種類が存在し、ラインは組織目標の達成に直接的に関わる業務または部門、スタッフは組織目標の達成に間接的に関わる業務または部門を指しています。組織は、ライン機能とスタッフ機能が相互関係を担い、バランスよく機能することで初めて、業績向上を図ることができます。
●組織設計の5原則
組織構造には、責任・権限一致の原則、命令一元化の原則、統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール)、専門化の原則(分業化)、例外の原則と5つの原則があると言われており、詳細は次の通りです。
①責任・権限一致の原則
職務において、義務、責任、権限は等しい関係にあり、職務には必然的に義務と責任があり、義務と責任を全うするために権限が与えられるべきであるという原則です。権限を与えることで、権限の範囲内で創意工夫を行う機会となるため、責任と権限のバランスは重要だと言われています。
②命令一元化の原則
職務においてメンバーは、常に一人の上司から命令を受けること、指揮命令系統を一元化すべきという原則です。複数の上司から異なる命令が生じると、現場には当然ながら混乱が生じ、業務効率が大きく低下するばかりか、トラブルの要因となりかねません。
③統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール)
一人の管理者が直接的に管理できる部下の人数には限界があり、これを超えると管理効率が低下するという原則です。管理者一人あたりが統制できる人数は、一般的には5〜10人程度、特定のライン業務であれば20〜30人程度までと言われています。
④専門化の原則(分業化)
組織では、機能毎に業務を分業し、専門性を高めることで生産性の向上を図るという原則です。業務を専門化することでスキルの習熟度向上が容易となり、ミス・トラブルが減少するばかりでなく、効率化に向けた創意工夫が生まれ責任感が高まるなど、多くのメリットを併せ持ちます。
⑤例外の原則
定型化された業務の処理は部下に委譲し、上司は非定型業務(戦略的意思決定および非定型業務の意思決定)に専念すべきという原則です。権限委譲の原則とも言われます。
組織均衡論
組織均衡論は、C.I.バーナードによって提唱された組織論の一つで、組織が存続していくためには「誘引」と「貢献」の2つの要素のバランスが重要であると唱えています。組織は、株主、経営者、従業員などの参加者が不可欠であり、それら参加者から労働や資本など、組織目標の達成に不可欠となる「貢献」を得続ける必要があります。
一方参加者を集うためには、配当や賃金など、活動の動機となる「誘引」を行わなければなりません。「貢献」が上回ると参加者の離脱が生じ、組織の存続が危ぶまれることから、組織は常に「誘引」が上回るバランスを保たなければならないとしています。
●組織均衡の中心的命題
組織均衡には5つの中心的命題が定義されています。
◉命題1 組織は、組織の参加者と呼ばれる多くの人々の相互に関連した社会的行動の体系である。
◉命題2 参加者それぞれ、および参加者の集団それぞれは、組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う。
◉命題3 それぞれの参加者は、組織から彼(彼女)に提供される誘因が、彼が組織から行うことを要求している貢献と等しいか、あるいはより大である場合にだけ、組織への参加を続ける。
◉命題4 参加者のさまざまな集団によって供与される貢献が、組織が参加者に提供する誘因を作り出す源泉である。
◉命題5 貢献が十分にあって、その貢献を引き出すのに足りるほどの量の誘因を供与している場合においてのみ、組織は支払い能力があり、生存し続ける。
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