●主活動(主要活動)
主要活動とは、消費活動に直接的な関わりをもつ活動を分類しています。項目には、「購買物流」、「製造」、「出荷物流」、「販売・マーケティング」、「サービス」の5項目をあげています。
○購買活動:製品製造のための原材料・部品の仕入れや保管
○製造 :製品の製造、装置・設備のメンテナンス、検品
○出荷活動:製品の工場から倉庫・店舗への出荷
○販売・マーケティング:製品のマーケティング、及び販売
○サービス:クレーム対応、販売後の導入支援、保守・運用サービス等のアフターサービス
経営資源を再分配することで、細部まで最適化を図る。
機能別・工程別の強み・弱みを抽出して、経営資源の再分配から付加価値の最大化を図る。
製品やサービスは原材料などの調達、製造、出荷・物流、販売・マーケティング、サービスに至るまでの事業活動を経て付加価値を高め、市場優位性を築くことで利益を生み出しています。一言で他社との差別化といってもその比較は容易ではなく、どの工程で具体的にどのような違いが生じているのかを把握することで、初めて明確な他社との違いや差が抽出されてきます。
バリュー・チェーン分析は、自社や他社の事業を機能別に分類し、どの工程でどの程度の付加価値が生じているのかを分析するためのフレームワークで、自社の課題や強みを機能別に抽出することで、市場優位性を築くための差別化戦略を容易にします。
バリュー・チェーン分析を行うにあたり、「付加価値とは何を指しているのか」を正しく理解しなければ、バリュー・チェーンのフレームワークを最大限に活用することはできません。辞典によると付加価値とは「企業が生産によって生み出した価値であり、企業の総生産額から、その生産のために消費した財貨や用役の価額を差し引いた額。」とされています。また、一般的には「特定の製品・商品やサービスに対し、後から付け加えられた独自の価値」という意味で認識されています。
これらを包括すると「企業が生産によって生み出す、製品やサービスそのものにプラスされた、他社にはない独自の価値」を指しており、本来あるべき機能や、独自性の低い要素は付加価値には当てはまらないと考えられます。 消費者ニーズが存在しない機能やサービスは、不要なコストを生じるばかりでなく、複雑化による難解さやデザイン低下を招く原因となり、消費者からの不信感や疑念の原因ともなりかねません。他社にはないという理由だけで後から付け加えられた要素だけでは、付加価値とはいえず、あくまでも消費者ニーズのある、消費者の満足度を高める要素を「付加価値」と限定する必要があるでしょう。
バリュー・チェーンの概念を開発したハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授は、購買物流・製造・出荷物流・販売・マーケティング・サービスなどの「主活動(主要活動)」と、企業・組織が行う生産活動を、管理・調達・人事・労務などの「支援活動(副次的活動)」の2つに大きく分類しています。
主要活動とは、消費活動に直接的な関わりをもつ活動を分類しています。項目には、「購買物流」、「製造」、「出荷物流」、「販売・マーケティング」、「サービス」の5項目をあげています。
○購買活動:製品製造のための原材料・部品の仕入れや保管
○製造 :製品の製造、装置・設備のメンテナンス、検品
○出荷活動:製品の工場から倉庫・店舗への出荷
○販売・マーケティング:製品のマーケティング、及び販売
○サービス:クレーム対応、販売後の導入支援、保守・運用サービス等のアフターサービス
支援活動とは、消費活動に直接的な関わりを持たない活動を分類しています。項目には、「全般管理(インストラクチャー)」、「調達活動」、「技術開発」、「人事・労務管理」の4項目をあげています。
○全般管理:財務、総務、経営企画など企業活動全般の支援
○人事・労務管理:従業員の福利厚生、給与算定等の人事・労務管理
○技術開発:技術の設計・開発
○調達活動:社外からの物品・サービスの調達・購入のための契約業務
では、バリュー・チェーン分析を行うことで、具体的にどのような効果を享受することができるのでしょうか。自社分析の視点、競合分析の2つの視点からバリュー・チェーン分析の効果を考えてみます。
マーケティング環境における内部環境分析において代表的なフレームワーク「SWOT分析」では、抽出された内部環境・外部環境を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つに分類し、クロス分析を行うことで課題解決や目標達成の最善策を検討していきますが、バリュー・チェーン分析では、機能や工程ごとで分類し、自社と競合他社を比較することで自社の強みや弱みをさらに具体的に明確化することができます。
競合他社の強みや弱みを同時に理解することで、今後の方針策定や事業戦略策定の足がかりを築くことができます。また、競合他社が今後どのような動向となるのかを予測することで、不足に備えた対策を講じることができるため、未来を見据えた戦略策定と危機管理の双方を可能にします。
経営資源は、ヒト(人)、モノ(物)、カネ(資金)、情報、時間、知的財産と6つに分類され、企業経営に不可欠なものとされており、これらの経営資源を適切なタイミングで適切な事業活動に投資することで付加価値を生み出し高めていきます。限られた経営資源を最大限に活用するためには、どの工程にどれだけの経営資源を投下し、効率の最適化から企業利益の最大化を図ることが肝要であり、バリュー・チェーン分析は最適なフレームワークのひとつだといえます。
バリュー・チェーン分析で付加価値の全体像を解明することで、自社が優先的に取り組むべき課題や投資すべき工程の見極めが容易となり、効果的な経営資源の再配分が可能となることで、より効率的な企業経営を可能にします。
バリュー・チェーン分析は、主活動(調達、製造、出荷・物流、販売・マーケティング、サービス)や支援活動(全般管理、調達活動、技術開発、人事・労務管理)など、工程ごとに自社の課題や強み・弱みを抽出することで、経営資源の最適化が可能となるため、製品やサービスの質の向上から企業利益の最大化を図ることができます。
企業利益の最大化には、「コスト削減」と「付加価値向上」の2つのアプローチがあり、企業は定期的なバリュー・チェーンの見直しからその双方に取り組み、利益の最大化を図ることが大切です。
ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱した基本戦略のうち、特に重要と言えるのが「差別化戦略」です。差別化戦略とは、自社の製品やサービスに独自の価値を付加することで市場での競争優位を築く戦略を指しています。差別化に不可欠な要素には、ブランド・イメージや独自機能、デザイン、顧客サービス、アフターフォローなど、様々なものがあげられますが、いずれにしても消費者に価値として認識され、競合他社が容易には模倣できないものである必要があります。
一方、前記の条件を満たす差別化戦略であったとしても、多くの実施コストを要することで製品価格やサービス料が高騰したり、ごく一部のコアなファンのみが対象となる差別化戦略であると、市場に普及しづらいといったリスクが生じます。他社との差別化戦略を策定する際は、顧客目線でバリュー・チェーン分析を行い、自社製品や自社サービスが市場優位に働くよう、客観的な視点と多くの意見を持って議論することが大切です。
バリュー・チェーン分析を正しく行うためには、分析の流れに沿って適切に情報を抽出していかなければなりません。ここでは、バリュー・チェーン分析を5つのステップに分けて紹介していきます。 なお、バリュー・チェーン分析には、客観的な視点での公平な評価と分析が不可欠となります。担当者の主観で分析が行われないよう、できる限り多くの関係者からヒアリングを行い、事業の全体像を俯瞰した上で、情報の正確性を精査することが肝要となります。
バリュー・チェーン分析にあたり、まず初めに行うのはバリュー・チェーンの図式化です。対象となる事業を機能別・工程別に分類しリストアップしていきます。事業を分解し、レイヤー毎に把握することで、課題の抽出や自社の強み・弱みを明確化することができます。また、リストアップ完了後は、項目を主活動、支援活動に振り分け、製品・サービス提供の流れに沿ってプロセス順に並べていきます。
次に、機能別・工程別のコストをリスト化して正確に算出していきます。コストのリスト化にはエクセルなどの表組みを用い、活用内容、部署名、年間コストなどを一覧にしてまとめることで全体像の把握が容易となります。
次に、機能別・工程別に強み・弱みを抽出して分析を行います。強み・弱みの定義には競合他社との比較が不可欠となることから、ライバル企業のリストアップを行い、自社との比較ができるよう並行して競合他社の強み・弱みの分析を行います。
VRIO分析とは、企業の経営資源を分析するために使われるフレームワークのひとつです。評価項目のうち強みとなる経営資源を、「価値(Value)」、「希少性(Rarity)」、「模倣可能性(Imitability)」、「組織(Organization)」の4つの項目に分け、競争劣位、競争均衡、一時的な競争優位、持続的な競争優位、持続的な競争優位の5段階で評価することにより、課題の抽出や注力すべき優先順位を設定することで、他社との差別化に向けた経営資源の最適化に向けた再分配を適切に行う判断軸をリスト化することができます。
前記する4つのステップを実施することで、「バリュー・チェーンの図式化」、「機能別・工程別のコスト把握」、「機能別・工程別の強み・弱みの分析」、「強みの質や施策の優先順位のリスト化」を行うことができ、いよいよ経営資源の最適化に向けた、再分配の検討を行っていきます。経営資源の最適化は、今後の経営戦略に基づき行われ、より多面的なコピタンス化を図るか、それともコア・コンピタンスへの集中投資を行うかなどを慎重に判断していく必要があります。
また、差別化戦略を成功させるためには自社だけでなく、「FLOW 03」で分析した評価をもとに競合他社の動向を常に視野に置き、十分な注意を払う必要があります。そして今後の市場を予測し、先見性を持って戦略を策定していくことが肝要です。
バリュー・チェーン分析は、自社経営資源の最適化を図ることで、他社との差別化から市場優位性を築くための差別化戦略を容易にするフレームワークですが、このバリュー・チェーンを自社だけでなく、事業に関わる取引先企業までをひとつのシステムとして捉えることで、市場に提供する付加価値のさらなる向上を図る考え方がバリュー・システムです。いかなる企業であっても、事業は、自社単体で成立することはありません。仕入先はもちろんのこと、販売委託先や物流、さらにはアフターフォロー提携先に至るまで、あらゆる企業が協業して初めて堅固な付加価値を生み出すことができます。
このことを念頭に、自社をバリュー・システムの1つだと考え、他社との連携を視野に入れたバリュー・チェーンの最適化やバリュー・チェーン分析行うことで、さらなる市場優位性を実現させることが可能となるでしょう。
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