ブランディングへの取り組み Case02.不動産業
理想の人生をサポートするパートナーであり続けるために。
お客様の人生のパートナーであり続けるためにリブランディングを行った、不動産業のブランディング事例を紹介します。
不動産業におけるブランディングの必要性
不動産業は、宅地建物取引業の免許を保有していれば個人事業でも開業できるため事業者も多く、競争過多な業界だと言えます。また、商品となる不動産物件の良し悪しがビジネスのすべてであると言っても過言ではないため、不動産の仕入れ力が事業の成否を左右します。
一方、取引単価が高く、物件情報が先行する不動産業界であるが故に、トラブルが後を経たないのが現状です。そんな不動産業界だからこそ、信頼・安心の確かなブランドを築き上げることが大切です。
不動産業は大きく3つの事業に分類することができますが、それぞれの業態からブランディングの必要性を解説していきます。
[不動産賃貸業]
消費者に最も身近で、老若男女を問わず購買行動が行われるのが不動産賃貸業です。不動産賃貸業で取り扱う商品は商業向けのテナントや倉庫、個人向けの住宅や駐車場などですが、特定の不動産業者でしか賃貸できない物件はほとんどなく、各社が情報をシェアして消費者に紹介していく取り組みが一般的なため、商品での差別化が難しい業態であると言えます。このことから不動産賃貸業を行う不動産業者は、商品ではなく企業そのものをブランド化して、安心や信頼を提供することで他社との差別化を図らなければなりません。
[不動産売買業]
人生において最も大きな買い物となる住宅購入。その大半が不動産売買事業者を介して行われています。居住を目的とした商品は土地、一戸建て、マンションのいずれかとなり、新築・中古の選択肢があります。不動産売買事業者の生命線は「不動産情報」であり、同業他社に先駆けていかに優良物件の情報を獲得できるかが事業の成否を左右しますが、消費者目線で不動産売買事業者を見たとき、最も重要なのは企業そのものや担当者との信頼関係であり、それは不動産ディベロッパーであっても不動産仲介業であっても同様です。
このことから不動産売買業を営む不動産事業者は、消費者だけでなく、同業者からも信頼される企業ブランディングの取り組みが不可欠であると言えます。また、自社ブランド物件を開発する不動産ディベロッパーは、戦略の根幹に他社との違いを明確に示す事業ブランディングが不可欠だと言えます。
[不動産管理業]
不動産管理の主な業務は、家賃の回収(入金管理)や物件の保守、入居者サポートです。不動産ディベロッパーが自社物件の販売から管理まで行うケースも多くありますが、不動産管理を専門とする事業者も多く存在します。不動産ディベロッパーが管理業務を行う場合、ファミリーブランドとしてディベロッパーのブランドをそのまま継承したブランディングが望ましいと言えますが、不動産管理を専門とする事業者は、どこよりも安心で信頼できる企業ブランドを確立しなければなりません。
不動産管理会社には財閥系の不動産管理会社も多く存在し、確かなブランドを築き上げているため、そこに劣ることのない信頼される企業ブランディングの取り組みが不可欠であると言えます。
ブランディングは独自性の言語化からはじまる
業種・業界を問わずブランディングでは、ブランドの中核となるMVV(ミッション/ビジョン/バリュー)開発から手掛け、次いでブランドコンセプト、タグラインなどのメッセージシステムを構築していきます。なかにはVI開発(Webサイト/パンフレット制作など)を先行したいとご要望を受けることがありますが、ブランドデザインにおいて重要なのは「何をデザインするのか」を正しく定義することにあります。そのため、ブランドの中核となるメッセージシステムの言語化から独自性(自社らしさ)を正しく定義し、定義された独自性をデザインで具現化することが大切です。
不動産業界のブランディング事例
これまでパドルデザインカンパニーが手掛けてきた不動産業界のブランディング実績より、「株式会社東京ミライズ」様の制作事例をご紹介します。同社のブランディングプロジェクトでは、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)をはじめとするメッセージシステムの開発に次いでブランドコンセプト開発、VI開発(ロゴ開発、Webサイト制作、会社案内パンフレット作成、コンセプト動画制作など)を行い、一貫性のある企業ブランドの具現化を図りました。そしてブランディングは、今日現在も継続して取り組み続けています。
制作事例|株式会社東京ミライズ|企業ブランディング
ドクターを中心としたお客様の資産形成や資産運用をサポートする、株式会社東京ミライズ。不動産投資のコンサルティングにとどまらず、医院開業や税務対策、医院経営のコンサルティングまで、幅広く事業を展開。お客様一人ひとりが理想とする人生を実現するために、経験豊富なコンサルタントが人生のパートナーとしてあらゆるサポートをしています。
●ブランディングの経緯
創業から10周年を契機に、より良い組織づくりに向け「CIリニューアルを図りたい」というご依頼からプロジェクトがスタートしました。はじめに、明文化されていなかったミッションやビジョン、バリュー開発に向け、社内アンケートで全社員の意見を徴収。その後、各部署から選任されたプロジェクトメンバーと共にワークショップを実施し、自社の強みや価値観の整理を行い、ありたい姿について議論を重ねました。ワークショップを通じて導き出した「お客様の理想の人生を実現するためのパートナーでありたい」という想いをブランドのコアに、MI/VI開発へとつなげました。
●Webアンケートやワークショップで自社らしさを抽出する
ブランディングにあたり、はじめに着手したのが、全社員を対象としたWebアンケート。社員が普段どのような思いで職務に従事しているのかを集計し、その結果を持ってブランディング・プロジェクトチームとのワークショップを実施しました。 ワークショップでは、東京ミライズの現在の姿、将来ありたい姿、そして利用者や求職者に求められている姿などをディスカッションし、新卒・管理職・役員など役職の枠を超えて意見交換を行うと共に、その思いを集約していきました。
●企業の中核概念となるMI開発
MI(マインド・アイデンティティ)とは、役員及び社員など、全ての社内メンバーが一丸となり果たすべき「Mission(ミッション)」、企業の存在意義や目指す未来を示す「Vision(ビジョン)」、そして持つべき価値観を言語化した「Value(バリュー)」などのメッセージシステムです。従来まで曖昧であった自社ならではの独自性を正しく言語化することから、企業ブランディングは始まります。 今回の取り組みでは、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を特に重視し、自社のあり方を徹底的に議論することで、自社のあるべき姿を言語化していきました。
●ミッション開発
●ビジョン開発
●バリュー開発
●ブランドコンセプト開発
MI(マインド・アイデンティティ)で定義したMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)に基づき開発したブランドコンセプトは「理想の人生を、ともに描く。」。さらにコンセプトを補足するブランドメッセージを開発し、ブランドの想いをすべてのステークホルダーにまっすぐ伝えていきます。
●ブランドのシンボルロゴ開発
MI開発に続き着手したシンボルロゴ開発では、「不動産」「パートナー」「理想までの道標」「未来・可能性」など、コアに掲げるキーワード毎に複数案のデザインを提案。採用されたシンボルロゴは、「お客様の人生のパートナーであり続ける」という姿勢を、2地点をつなぐ架け橋をモチーフに、3本のラインで3つのバリューを表したデザイン。社名のイニシャル「M」を図案化しています。
●シンプルで上品なステーショナリー
封筒各種と名刺は、ホワイトをベースにしながら、コーポレートカラーであるグリーンを差し色に使い、上品でシンプルな構成にまとめました。封筒は既製品ではなく、上質なファンシー系の用紙を用いて製作することで、企業ブランドを細部にまで感じて頂けるよう設計しています。
●情報発信のプラットフォームWebサイト
Webサイトでは、自社のアウトラインを伝えるのはもちろんのこと、4つの事業を具体的に伝えることを重視。お客様であるドクターは医療のプロであり、資産形成や経営のプロではありません。だからこそ資産形成運用、節税に対する知識を伝え、より興味をもっていただけるサイト設計を目指しました。お客様の人生のパートナーを務めるコンサルタントを数多く紹介することで、お客様に安心感を与えるWebサイトに仕上げています。
●想いやスタンスを伝える会社案内パンフレット
CIリニューアルに併せ、会社案内パンフレットも一新。お客様との商談に使用することを想定し、事業内容や会社情報を伝えるだけではなく、ミッション、ビジョン、バリューなど、企業として大切にする想いやスタンスが伝わる構成を目指しました。
●事業・サービスを動画で伝える
東京都医師協同組合連合会の賛助会員として、さまざまな学会でブース出展を実施する東京ミライズ。従来から使用してきた会社案内やプレゼン資料に加え、音と映像で興味を誘引する会社案内ムービーを制作し、ドクターへのアプローチを図ります。事業案内や5年間の業績をアピールする他、お取引いただくドクター4名へのインタビューを収録し、説得力を強めています。
制作事例|株式会社東京ミライズ|採用ブランディング
さらなる採用強化に向け、企業ブランディングと並行して採用ブランディングを実施。伝えたいのは東京ミライズの描く「未来図」。Webサイトの採用ページの充実に加え、採用案内パンフレット、採用動画を制作し、東京ミライズで働く魅力を伝えていきます。
●東京ミライズの未来図を描く採用案内パンフレット
新卒採用に向けた採用案内パンフレットは、応募者が自宅に持ち帰り、両親に見せながらエントリーするかどうかを検討することが想定されます。そのため、求職者本人へのアピールに加え、ご両親が納得できる企画を検討。決定した企画は、ミライズの未来図。ミライズで働く社員たちが「理想の未来図」を語ることで、社風や企業文化を伝える構成としました。
●未来図を伝える採用動画
求職者に会社の魅力が伝わるよう、会社説明会で放映する採用動画を制作。4名の社員が出演し、本音トークを繰り広げる座談会の構成です。入社の決め手は?実際に働いてみてどうだったか?何を期待するか?など、それぞれの言葉で、東京ミライズを伝えていきます。
ブランディング成功の要因は、メッセージの一貫性と継続性
ブランディングにおいて最も大切なのは、ブランドを実践するすべての従業員が、MI(マインド・アイデンティティ)を理解し実践すること。そして、その取り組みを継続することで、ブランドの市場価値を高めロイヤルティの高いファン層を形成していくことです。
東京ミライズでは、ミッションに「ドクターが抱える課題を解決に導き、人生のパートナーであり続ける。」こと、ビジョンに「理想を実現する人生を増やし、医療と経済の活性化に貢献する。」こと、3つのバリューに「「資産をつくる」「人生を支える」「パートナーになる」を掲げ、実践し続けることで、市場でのブランド価値向上を目指します。
ブランディング成功の要因は「メッセージの一貫性と継続性」にあると言えます。売上重視の一過性のプロモーションだけでなく、ブランドエクイティを高め、ブランドのファンを獲得し、ブランドロイヤルティを高めていくことで、市場で選ばれるブランドを育んでいくことが、中長期的に成長する強い企業づくりへとつながります。
特に経営資源が潤沢でない中小企業は、企業・商品の根本的な価値創出(ブランディング)を図ることがビジネス成功の秘訣です。